経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 政治

財務省人事、結局は岡本氏の次官就任で決着。注目は太田氏の主計局長就任

 文書改ざん問題で迷走を続けていた財務省のトップ人事がようやく収束しました。かねてから本命視されていた岡本薫明主計局長が次官に昇進しましたが、財務省としては規定通りの人事ということになります。

岡本氏は文句なしのエリート・コース

 財務省の人事は、文書改ざん問題やセクハラ問題を受けて迷走していました。辞任した福田淳一次官の後任としては、主計局長である岡本薫明氏が本命とされていました。主計局長から次官昇進というのは、財務省ではもっともオーソドックスな次官就任コースですし、岡本氏は次官になるための要件をほぼすべて満たしています。

 岡本氏は1983年入省で、一貫して予算を扱う主計局を歩んできました。その後、金融庁への出向を経て、秘書課長、主計局次長と重要ポストを歴任し、主計局長に就任しています。財務省的には文句なしのエリートコースといってよいでしょう。

 一時期、岡本氏と同期入省である星野次彦主税局長の次官就任がほぼ固まったという報道がありました。星野氏は文書課長は務めていますが、主計官の経験がなく、しかも主税局長からの昇進ということになりますから、星野氏が昇進した場合には異例の人事となるところでした。このほかメディアでは、様々な人事の情報が飛び交いましたが、結局は、規定通りの人事に落ち着いたことになります。

 官僚組織というのは、外部からの干渉を徹底的に嫌うという特徴があり、自ら確立した人事パターンの踏襲を強く望みます。最強官庁と呼ばれる財務省は特にその傾向が強いことで知られていますが、財務省から見れば、今回の人事は、政治の干渉を何とか回避したという形になるでしょう。

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太田氏が来年以降、次官に昇進するのかがポイント

 官庁の人事においては入省年次が絶対ですから、新しい次官が誕生すると、ほぼ次の次官も確定するというのが一般的な流れです。

 岡本氏は1983年入省ですから、本来なら次の次官候補は1984年入省組か85年入省組となります。ところが、今回の人事では、岡本氏と同期入省で理財局長だった太田充氏が主計局長に就任しました。主計局長は次官になる最有力ポストですから、太田氏が次の次官になる可能性が出てきたわけです。

 もっとも太田氏は、主計官や主計局次長の経験はありますが、文書課長や秘書課長といった次官の登竜門と呼ばれるポストを経験していません。太田氏が理財局長に就任した時には、その後は国税庁長官となって省外に出るとの予想が大半でした。ところが今回、太田氏が主計局長に就任したことで、状況が大きく変わってきました。

 84年入省組には有力な次官候補者がいませんでしから、これまでは85年組から次の次官が出るとの見方がもっぱらでした。85年組で有力なのは、官房長の矢野康治氏、総括審議官の可部哲生氏、国税庁次長の藤井健志氏の3人でしたが、藤井氏は今回の人事で国税庁長官に昇進しましたから、本省に戻る可能性は低くなったと考えてよいでしょう。

 矢野氏は官房長留任、可部氏は理財局長ですから微妙なところです。ちなみに可部氏は自民党の岸田文雄政調会長の義弟なので、どうしても政治色が強くなります。岸田氏は結局、総裁選の出馬を断念しましたが、こうした政局も人事に関係してくることになります。

 そうなってくると、太田氏の次官就任後、85年組からは次官が誕生せず、86年組が次官になる可能性も浮上してくるでしょう。そうなってくると、今回の人事で総括審議官に就任した茶谷栄治氏などが有力候補となるかもしれません。

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