加谷珪一の投資教室 実践編 第20回
投資をスタートするにあたってよく出てくる質問が、投資信託などプロに託すべきかという問題です。結論から言うと、筆者はこうした投資信託の活用には否定的です。その理由はコストがバカにならないことに加え、プロの運用者が本当に好成績なのか保証できないからです。
ファンドマネージャーは本当に投資が得意なのか?
プロに運用を託すと、当然のことながらコストがかかります。運用手数料が2%だとすると、毎年のリターンからこの数字を差し引かなければなりません。株式の平均的なリターンは6%程度なので、これが4%になってしまいます。
パーセントで書くとピンとこないのですが、要するに、これは利益の3分の1が手数料として抜かれてしまうことを意味しています。1年、2年という短期ならまだしも、これが5年、10年と続いてくると、かなりの金額に膨れあがります。場合によってはコスト負けしてしまうというケースも出てくるでしょう。
さらに重要なのが、こうした投資信託の運用担当者が本当に卓越した投資家なのか非常に怪しいという点です。特にローテーション人事が一般的な日本の金融機関の場合はなおさらです。
最近では日本企業でもプロフェッショナル化が進んでおり、同じ分野を長く経験した人がファンドマネージャーを務めることが多くなっているかもしれません。しかし、その人物が過去どれだけの実績を上げたのか、一般の投資家が詳しく知る方法はありません。
直接株式に投資する場合には、その企業のことをよく調べた上で投資する必要がありますし、多くの人がそうしていると思います。よく分からない会社に投資する人は少数派でしょう。
自分で銘柄を選んだ方が、圧倒的にリテラシーが高くなる
ファンドマネージャーも同様で、大金を預ける以上、その人のことは企業と同じように調べる必要があるはずですが、現実にはそれができません。どちらの方が、不確実性が高いかと問われれば、ファンドマネージャーを評価する方が難しいという結論にならざるを得ません。
それでも、投資のことはよく分からないのでプロに預けた方が安心という人は、自分にこのように問いかけてみるとよいでしょう。「あなたは投資ができるかできないか保証のない見知らぬ人に自分の財産を預けることができますか?」と。
この問いに対する答はほとんどの人がノーということになるはずですが、現実にはこれを多くの人が行っています。
投資信託は一定のルールにしたがってポートフォリオ管理を行っているので、仮に運用がうまくいかなくても、莫大な損失を出す可能性は小さいと考えられます。しかし、そのことに対して毎年、多額の手数料を払うことが妥当なのかは微妙なところでしょう。
また個別銘柄を選ぶ作業をする方が、圧倒的に企業や株式市場に対する理解が深まり、結果的に投資リテラシーの向上につながります。
筆者は投資信託を全否定しているわけではありませんが、投資信託を購入するにあたっては、このあたりを十分に吟味する必要があります。低コストのETF(上場投資信託)でインデックスを中心に運用するのはひとつの方法ですが、そうでない場合には、可能な限り、個別銘柄の方がよいでしょう。