お金持ちを科学する 第17回
お金儲けには2つの種類があります。ひとつは他人の富を自分のものにする奪い合い型のお金儲け。もうひとつは富を創造するタイプのお金儲けです。お金がない人ほど前者を、お金がある人ほど後者を好む傾向が顕著です。
ゼロサムゲームの意味
お金を稼ぐという行為には、少なからずゼロサムゲーム的な要素がつきまといます。ゼロサムゲームとは、誰かが得をすると、誰かが損をしているという状況のことを指す言葉です。つまり、先ほどの例にあてはめると、奪い合い型のお金儲けです。
もう少し詳しく説明すると、ゼロサムゲームとは、得点の総和がゼロになるゲームのことを指します。ゼロサムゲームでは、勝者が1点獲得した場合には敗者は1点を失います。つまり誰かが勝てば、誰かが負けることであり、それは限られた富を奪い合っていることを意味しています。このようなゲームは市場が拡大しない閉鎖的な状況ではよく見られる光景です。
しかしながら、いつでも富は奪い合いなのかというとそうではありません。
経済が拡大していれば、全体の富が大きくなるという現象が起きるので、奪い合いにはならないのです。勝者が10点を得た時、敗者が3点得ているというケースを考えてみましょう。確かに、勝者の方がより多くの富を得ているのですが、敗者もプラスになっているので、全体としてみれば、敗者から奪ったわけではありません。
もちろん、相対的に見れば勝者の方がより多く稼いでいるのですが、マクロ的に奪い合いになっていないところが重要です。
富を創造するのがお金儲けの王道
最近の日本は経済全体が停滞していることから、成長できない市場と見なされるようになってきました。携帯電話はかつて成長市場でしたが、現在はほぼ全員が保有しており、シェアを上げるためには他社から顧客を奪うしか方法がない状況です。
これは投資の世界も同じです。株価の低迷が続く市場では、時価総額が増えないので市場はゼロサムゲーム的になります。しかし継続的に上昇する市場では、程度の差こそあれ全員が勝者になれる可能性も出てきます。
つまり、奪い合いのゲームと富を創造するゲームを比較すると、明らかに得られる富の総量は後者の方が大きくなります。お金持ちの人が、富の奪い合いではなく、富の創造を好むのは、よりたくさん儲けることができると考えるからです。
市場メカニズムがあまり発達していない領域では、身近な人から富を奪うのが当たり前です。いわゆるブラック企業がその典型ですが、より儲かるビジネスモデルを考えるよりも、身近な弱い人をいじめて搾取した方が、てっとり早いと考えてしまうわけです。
身近な人から奪うというやり方は、富を創造するやり方に比べるとあまり儲かりません。お金のない人からさらに搾り取ったところで、その金額はたかが知れているからです。とりあえず弱い人からお金を奪うというのは容易なことなので、志の低い人はこうしたやり方に走ってしまいます。
しかし本当にお金儲けをしようと思うのなら、こうしたやり方を選択してはいけません。新しいビジネスを生み出し(つまり富を創造し)、創造した富の中からより多くを自分のものにするというのがお金儲けの王道です。