経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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トランプ政権が本当に自動車関税を発動したら日本メーカーはどうなる?

 トランプ政権が次々と関税措置を繰り出し、中国やEUが報復関税を打ち出すなど、貿易交渉は泥沼となっています。いくつかの案件が平行して走っていますから、非常に分かりにくい状況ですが、今回は、日本への影響が特に大きい自動車関税について解説したいと思います。

トヨタとスバルが特に大きな影響を受ける

 米国は今年3月、通商拡大法232条に基づいて、鉄鋼とアルミに関する関税措置を発動しました。すでに鉄鋼製品には25%、アルミには10%の追加関税が課されています。

 この措置は日本も対象となっていますが、一部の日本製品は適用が除外されるなど影響は限定的です。日本にとってもっとも影響が大きいのは、自動車および関連部品に対する措置でしょう。

 トランプ政権は今年5月、日本の自動車と自動車部品に対して、最大25%の追加関税をかける可能性があると表明。商務省に対して具体的な調査を指示しました。もし自動車と自動車関連部品に関税が課された場合、日本経済が大打撃を受けることはほぼ間違いありません。

 2017年に日本が米国に輸出した自動車および自動車関連部品の総額は約5兆5000億円となっており、米国向け輸出の3分の1を占めています。関税が引き上げられた場合の影響は甚大です。

 具体的にはトヨタとSUBARU(旧富士重工)が大きな打撃を受けると考えられます。

 トヨタは2017年度に全世界で896万台を販売していますが、このうち約半数の420万台が国内生産となっており、100万台弱を米国に輸出しています。高級車のレクサスは米国生産もしていますが、多くは日本からの輸出です。

 トヨタのグループ企業であるSUBARUはさらに厳しいでしょう。同社の2017年度における販売台数のうち7割が北米市場向けですが、国内生産比率も7割に達しています。残りは北米で生産されているので、北米で販売される製品の約半分は日本からの輸出という計算になります。

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トランプ政権の本当の狙いがFTAだとしたら・・・

 影響はこれだけではありません。日本メーカーはグローバル市場でドイツ車と争っていますが、今回の関税措置はドイツに有利に働く可能性があるのです。

 ドイツも米国に自動車を輸出しているので、関税措置が発動されれば大きな影響を受けます。しかし、ドイツの自動車関連の対米輸出額は3兆7000億円で、輸出全体に占める自動車関連の割合は約4分の1しかありません。経済における自動車への依存度が日本よりも低いのです。

 さらに言えば、米国への輸出が低迷した場合の代替措置についてもドイツが有利です。ドイツは中国に対して年間約3兆円を輸出しており、中国市場ではかなりのシェアを持っています。一方、日本メーカーの対中国輸出は約1兆4000億円しかなく中国市場では苦戦しています。

 米中は事実上の貿易戦争状態ですので今後、どうなるかは分かりませんが、中国は自動車の関税を大幅に引き下げる意向を示しています。中国市場に強いドイツ・メーカーは、米国向けの輸出が低迷した分を中国市場で取り返すことが可能ですが、日本メーカーにとっては簡単な話ではありません。

 トランプ政権の真の狙いは日米FTA(自由貿易協定)の締結とも言われています。

 トランプ政権がFTA締結のための交渉材料として自動車関税を持ち出しているのだとすると、日本は難しい選択を迫られそうです。FTAを拒否すれば自動車業界が大打撃となり、FTAの交渉を進めてしまうと、農業など別の分野で法外な要求を突きつけられる可能性が高いでしょう。日本の外交戦略が問われることになります。

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