加谷珪一の投資教室 実践編 第8回
前回は、ヘッジファンドはそれほど難しいことをしているわけではないという話をしましたが、投資の世界にはこれとは逆のパターンもあります。FX(外国為替証拠金取引)は、本当はかなり難しいのに、初心者でも取り組みやすいというイメージが出来上がっています。
日本は世界でも屈指のFX大国
FXは、為替という難しい商品を扱い、しかも高いレバレッジをかけることが可能ですから、本来なら相当熟練した投資家が取り組むべき投資対象といってよいでしょう。ところが日本では、株式投資は難しいからという理由で、まずはFXから入るという人も少なくありません。
確かに為替というのは、円安になるか円高のなるかの2つに1つなので、見方によっては、単純なゲームに思えるかもしれません。しかし、為替の値動きを決定する要因は無数に存在しており、何で為替が決まるのかについて、簡単に結論付けられるものではありません。
長期的に見た場合には、為替は2国間の物価水準との相関性が高いことが知られています。ドル円を例に取れば、ニクソンショック以来、40年間にわたってドル円は購買力平価による為替レートと高い相関性を示してきました。しかしながら、短期的には為替は様々な要因で変動しますから、これを予想するのは並大抵のことではありません。
ちょっとしたマーケット環境というミクロなものに始まり、大きいところではマクロ経済指標の動向や政局なども関係してきます。このため、為替の動向を的確に予測することはプロでも難しいというのが現実なのです。
株式投資は実はもっとも簡単
一方、為替と比較すると、株式における価格の変動要因はそれほど多くありません。
株価もマクロ経済から大きな影響を受けますが、変動要因としてもっとも大きいのは、その会社の業績であり、株価の分析もそこが中心となります。狭い範囲の情報の中で分析が完結するので、初心者でも手を出しやすいのです。
筆者は投資の経験が豊富でない人は、まずは株式投資から始めるのがベストだと考えていますし、投資に精通した人なら大半の人がそう判断するでしょう。
投資に値する会社なのかを判断するためには、自分がその会社のトップだったらどうするのかを考えるのが早道です。株式投資を行うということは、会社経営を行うことに近い思考回路が求められるので、ビジネスマンにとっては、自身の仕事にも相乗効果があるはずです。
株式投資に十分に慣れてきたら、他の商品への投資についても検討していけばよいでしょう。その中でFXが有力な選択肢となるであれば、それはそれで構いません。しかしながら、投資の初心者が、一番最初に取り組む商品としては、FXはお勧めできないというのが正直なところです。