経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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中国企業恐るべし。オーディオ・アンプがわずか2000円

アマゾンに出店する中国事業者の価格破壊 その1

 このところアマゾンのサイト内で中国の事業者の存在感が高まっています。中国の事業者は、オーディオやおもちゃ、工具など、最先端とは思われていない分野において次々と価格破壊を仕掛けており、従来の常識が大きく変わろうとしているのです。

 これまで国境というカベに守られていた業種にとっては脅威ですが、ネット時代におけるオールド・ビジネスの新しいあり方を提示しているともいえるでしょう。アマゾンにおける中国事業者の動向を探ってみました。

米国で火が付き、一気に世界ブランドに

 一部のオーディオ・ファンの間ではすっかり有名になっていますが、Lepyというブランド名の中国メーカーがこれまでの常識を覆す製品を次々に投入しています。

 Lepyブランドの製品を製造しているのは、広東省にある歩康電子科技という企業で、アンプなどのオーディオ機器を得意としています。
 当初は無名の企業でしたが、米国のカーオーディオ・マニアの間で有名になり、一気に世界各地にその名前が広がりました。Lepy製品は、通常なら1万円から3万円程度はすると思われるアンプ製品が、数千円、場合によっては2000円くらいの価格で買うことができます。

 多くの販売店があるようで、アマゾンでは多くの出店者がLepyの製品を取り扱っています(アマゾンのサイトはこちら)。筆者も実際に購入してみたのですが、高級オーディオとは比較にならないものの、この価格を考えると十分に満足できる音質でした。

 詳しい情報が提供されているわけではなく、ある程度、自力で物事を解決できる利用者に限定される商品ですが、一部のファンが回路図を推定した情報をサイトにアップするなど、ちょっとしたコミュニティが出来上がっています。

 同社が本拠地とする広東省には、深センなどハイテク集約基地があり、中国のシリコンバレーといってもよいエリアです。この企業も、当初は、ガレージのようなところからスタートとしたといわれており、一種のチャイナ・ドリームなのかもしれません。

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日本でも同じビジネスモデルは実現可能

 中国の人件費はすでにかなり高騰しており、広東省のような沿岸部では日本を上回るケースも出てきています。そうであるならば、日本でも同じようなビジネスモデルで勝負する企業があってもおかしくありません。

 大阪に本拠をおくノースフラットジャパンは、Lepyと似たようなコンセプトで低価格なオーディオ製品を製造・販売している企業です。アマゾンのサイトを覗くと、真空管アンプなど、一部のファンにとっては垂涎の的となるような製品が、低価格で販売されていました(アマゾンのサイトはこちら)。

 同社は中国にバイヤーを駐在させ、安い価格で部品を調達することで、コスト・パフォーマンスを実現しているようです。同社の事業規模は不明ですが、それほど大きい会社ではないでしょう。ネット時代においては、かつては大きな組織でしか実現でなかったメーカーという業態も簡単に作れてしまうわけです。

 ネット活用したビジネスのすべてが、AIを駆使した先端的なものとは限りません。オーディオは一種のオールド産業ですが、工夫次第では十分、ビジネスになるということを、これらの企業は教えてくれています。

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