森友問題のキーマンの一人とされる佐川宣寿国税庁長官が辞任したことで、政治の潮目が変わりつつあります。どのような形で決着するのかは何とも言えませんが、9月の総裁選を控え、与党内のパワーバランスが大きく変化することは間違いないでしょう。
カギを握るのは自民党の二階幹事長
学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、当時、財務省の理財局長だった佐川宣寿国税庁長官が2018年3月9日、辞任しました。森友問題については、財務省内に複数の決裁文書が存在するとの指摘がありましたが、佐川氏はこれを否定していました。財務省は佐川氏の辞任を受け、複数の文書が存在することを認める方針に転換しました。
当初、森友問題はうやむやなまま幕引きとなる可能性が高いと言われてきましたが、ここに来て、再び政治問題化しています。普通に考えれば、野党の激しい追求で風向きが変わったというところでしょうが、今の野党にそのような政治力はありません。
これは自民党内のパワーバランスが大きく変化した結果と考えるのが自然でしょう。キーマンになっているのは、自民党の二階俊博幹事長です。
安倍政権の政治運営は基本的に官邸主導型でしが、このところ、党の影響を強く受けるケースが多くなっています。
当初、安倍首相は2月9日に行われた平昌五輪開会式を欠席するつもりでしたが、一転して出席することになったのは、党内からの強い要請があったからです。
また、今国会に提出予定だった裁量労働制(働き方改革関連法案の一部)を見送ったのも、党の意向に配慮した結果です。つまり安倍氏は不本意ながら2回も妥協を強いられわけです。
9月の総裁選を見据えた動き
これらの動きの中心にいるのが二階氏なのですが、すが、二階氏が政治的な動きを積極化しているのは、9月に行われる自民党の総裁選を意識しているからでしょう。
安倍氏は9月の総裁選で3選を目指していますが、党内には、長期政権化に対する不満の声が高まっています。こうした声を代弁しているのが、石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長、小泉進次郎筆頭副幹事長などですが、特に岸田氏は旧宏池会という派閥を率いており、ポスト安倍の可能性がもっとも高いとされています。
これまで安倍氏は、世論の支持を背景に、派閥力学に影響されることなく政治を運営してきました。しかし、状況は変化しており、9月の総裁選は必ずしも盤石とはいえなくなっています。
安倍氏の政治的関心がすべて憲法改正に集中しているのは間違いありません。今の安倍氏は憲法改正のためなら、あらゆる妥協をするはずであり、二階氏はここを政治的チャンスと捉えているようです。
ちなみに二階氏は、首相を目指すタイプではなく、あくまで利害調整型の政治家です。最終的に安倍氏を支持することで政権内でのパワーを拡大するのか、それとも、岸田氏などを巻き込み、安倍政権を倒すつもりなのかはまだ分かりません。
いずれにせよ、今回の佐川氏の辞任をきっかけに、党内がにわかに騒がしくなってくるのは間違いないでしょう。当然ですが、この動きは市場動向に大きな影響を与えることになります。