経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. ビジネス

マクドナルドのV字回復はホンモノ

 日本マクドナルドの業績が急回復しています。2017年12月期決算は純利益が前年比4.5倍と過去最高益となりました。営業利益も順調に増えており、マックはほぼ完全復活を果たしたといってよい状況です。

直営店もフランチャイズ店も好業績

 同社は2014年に期限切れ鶏肉や異物混入問題を起こし、業績が低迷していました。2014年12月期の決算は218億円の最終赤字に転落。翌2015年12月期には赤字が349億円に達しました。しかし、この頃を境に業績が徐々に上向き始め、今回の増益につながっています。

 誤解されることが多いのですが、マクドナルドはフランチャイズ(FC)制度を採用しているため、マクドナルド各店の業績と日本マクドナルドの業績は一致しません。メディアの報道の中にも、日本マクドナルドの業績と、各店舗の業績を混同したような分析が見られます。

 マクドナルドの店舗は全国に約2900店舗ありますが、このうち直営店は約930店しかなく、残りはすべてフランチャイズに加盟している別企業となります。直営店の売上高は日本マクドナルドの業績に反映されますが、フランチャイズ店については、各店から徴収するロイヤリティだけが日本マクドナルドの売上高となります。

 店舗の業績が良ければロイヤリティ収入も増えますから、店舗が元気になると、本体も元気になるというのは間違いありませんが、理屈上は、ロイヤリティの条件を操作することで、本体の業績を変動させることも可能です。したがってフランチャイズ制度を採用している企業の業績を分析するには、本体だけでなく、各店舗の状況にも気を配る必要があります。

 過去3年間で、各店舗あたりの売上高は直営店で23%、フランチャイズ店で14%増加しています。フランチャイズ店から徴収するロイヤリティも順調に増えていますから、マック全体の業績が良くなっているのは間違いありません。

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同社は拡大路線を打ち出しているが・・・

 同社CEO(最高経営責任者)のカサノバ氏は、不採算店舗の閉鎖と店舗リニューアルを同時に進めており、すでに80%の店舗でリニューアルを完了しました。店舗の統廃合自体は前CEOである原田泳幸氏の時代から続いていたものですが、その効果が出てきたようです。

 店舗の収益力が高まると、各種キャンペーンも効果的に打てるようになります。同社の愛称が地域で異なることを利用した「マック」vs「マクド」の対決や、「ポケモンGO」とのタイアップなど各種施策がうまく作用し、売上拡大に結びつきました。

 同社は中期経営方針を策定し、2020年にかけて全店売上高を年平均5%拡大させるという強気の目標を打ち出しました。ただ、今後は人口減少による市場縮小という逆風もあり、拡大戦略を追求できるのかは微妙なところでしょう。カサノバ氏にとっては腕の見せ所となります。

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