経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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ソニーミュージック乃木坂ビルのジャニーズ売却から分かること

 ソニー・ミュージック・エンタテインメント(SME)が、東京・赤坂(乃木坂)にあるビルをジャニーズ事務所に売却したことが明らかとなりました。企業経営と活動拠点(不動産)には密接な関係があります。今回の売却からは2つのことが推察されます。

 SMEは2018年5月15日、SME乃木坂ビルと、市ヶ谷にあるSME市ヶ谷ビルの2つを売却したと発表しました。売却先は公表されていませんでしたが、その後の報道で、乃木坂ビルについてはジャニーズ事務所だったことが分かりました。

 今回、売却されたビルの中でも、特にSME乃木坂ビルは、スタジオが併設されていたこともあり、ソニー所属のアーティストにとっては感慨深い場所です。また乃木坂は、多少不便で奥まったエリアですから、音楽ビジネスの拠点としてはむしろ好都合だったわけです。

 SMEは乃木坂にあった拠点を六本木のミッドタウンに移し、残ったビルにはジャニーズ事務所が入ります。ジャニーズ事務所の本拠地も乃木坂でSMEビルのすぐ近く(乃木公園の角を曲がってすぐ)ですが、1000億円にもなるといわれるジャニーズ事務所の事業規模の割には、こぢんまりとしたビルであり、創業家によるファミリービジネスというイメージの強いものでした。

 今回、旧ソニーの大きなビルに移転するということは、ジャニーズ事務所が、よりオープンな組織経営の体制に移行する前兆かもしれません。

 ジャニーズは創業者のジャニー喜多川氏と姉のメリー喜多川氏が二人三脚で経営してきました。
 しかし最近ではジャニーズが巨大になったことや、看板タレントであったSMAPの独立騒動などがあり、よりオープンな経営体制への移行が囁かれていました。両氏ともかなりの高齢ですから、近い将来、何らかの決断が下される可能性は高いでしょう。

 一方、ソニーにとっても今年は大きな転換点となります。

 同社は2012年3月期に4500億円もの巨額赤字を計上。ハワード・ストリンガーCEO(最高経営責任者)に代わって平井一夫氏がトップに就任したものの、2年連続で1000億円を超える赤字を出すなど業績低迷が続いていました。
 平井氏はPC部門の売却やテレビ部門の分社化などリストラを進め、昨年あたりからようやくその効果が見え始めました。2018年3月期の営業利益は過去最高の7200億円に達する見込みです。

 同時にソニーは平井氏から吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)へのトップ交代も明らかにしています。現職がCFOという財務部門であることからも分かるように、吉田氏は根っからの管理畑です。以前のソニーであればこうした人物がCEOに就任するという人事はあり得ませんでした。

 今後のソニーは、良くも悪くも「普通の会社」であり、経営も管理部門主導の色彩が濃くなるでしょう。こうした中で、グループ企業であるSMEも、不動産の整理や組織の集約化が求められた結果と考えられます。

 ちなみに乃木坂ビルに併設されていたスタジオは、ソニーがジャニーズから賃借し、引き続きソニーのスタジオとして利用されるとのことです。

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