経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経済

街中のATMは近い将来、激減する可能性が高い

 銀行のATM網が見直しの対象となりそうです。背景にあるのは銀行の収益が低下していることと、電子マネーなど非現金の決済手段が拡大していることです。

 よく知られているように、日本はかなりの現金大国です。日本で現金決済がなくならないのは、日本人が現金好きということに加え、ATM網の整備が進んでいることが大きく影響しています。国内には約20万台のATMが稼働していますから、いつでも現金を引き出すことが可能です。

 しかしこのATM網の維持には多額のコストがかかっています。ボストン・コンサルティング・グループの試算では年間2兆円になるとのことです。このコストは手数料や金利の抑制など、何らかの形で利用者が負担する結果となります。現金のコストはそれだけではありません。小売店などでは毎日、大量の釣り銭を確保するため、多額の人件費をかけて銀行から棒金(コインを束ねたもの)を調達しています。日本全体で見た場合、このコストはかなりの金額に達するでしょう。

 昨年末、メガバンク各行が大量の人員削減計画を明らかにしたことからも分かるように、銀行経営は厳しい状況となっています。各行は大規模なコスト削減を迫られていますが、その対象のひとつとなっているのが多数のATMです。

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ATMが減ると企業の決済方法も変わってくる?
 電子マネーが普及すればATMへのニーズは確実に減少します。銀行が独自の仮想通貨を開発しているのも、ATM網やそれに伴うシステムのコストを削減したいからです。

 もしATMの数が減少すると、企業における決済方法も大きく変わる可能性があります。それは銀行振り込みを多用したツケ払いの商習慣です。

 日本企業における決済の現場では、請求書を発行し、翌月末あるいは翌々月末に支払いというケースが圧倒的に多くなっています。要するにツケ払いですが、実はこの方法はかなり非効率でリスクが高いものです。

 本来、製品やサービスを提供する側は、できるだけ早くお金が欲しいはずですし、製品やサービスを買った顧客が確実にお金を払ってくれるという保証はありません。そうであるならば、小切手を受け取ったり、カード決済を確認してから商品を出荷する方が安全で合理的ですし、実際、諸外国ではそうなっています。今後は企業間の電子マネー決済が主流になっていくでしょう。

 決済に関する分野は、実はガラパゴスだらけです。おそらくここ数年の間にこうした商慣行は一気に変化することになるかもしれません。

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