米アマゾンが、レジのないAIコンビニの一般開放に踏み切りました。このところ、コンビニのレジを無人化しようという動きが活発ですが、アマゾンの「レジなしコンビニ」と「レジの無人化」は根本的に異なります。レジ無しコンビニは、小売業のあり方を根本的に変革する可能性を秘めており、極めて大きなポテンシャルを有しています。
米アマゾンは1月22日、AIコンビニ「アマゾン・ゴー」を一般向けに開業しました。同社は2016年12月にAIコンビニ構想をあきらかにし、本社のあるシアトルで社員による実証実験を行ってきました。当初は2017年3月に一般開放予定でしたが、技術的なトラブルから延期となっていました。
今回、ようやくオープンにこぎ着けたということは、運用上の課題の多くが解決されたとみてよいでしょう。当面、シアトルでの店舗運営に集中するとのことなので、多少の技術的課題は残っているようですが、一般向けに開放できた意義は大きいといえます。
アマゾン・ゴーは、ネットビジネス上にある店舗
日本では人手不足ということもあり、コンビニ各社が無人レジの導入を検討しています。「レジの無人化」と「レジなし店舗」は似たように見えますが、まったく異なる概念であることを理解する必要があります。この違いが分からないと、AI社会の本質を理解することはできません。
小売店というのは、商品を並べて不特定多数の顧客の入店を待つという受動的なビジネスです。無人レジは、店員が精算業務を実施せず、顧客が自身で会計するだけであって、小売店としての仕組みは何も変わっていません。
しかしアマゾンの無人コンビニは、レジそのものがなく、しかも来店するのはアマゾンの会員のみという店で根本的に異なる存在です。顧客がどのような人で、何を欲しているのか、アマゾン側は、ECサイトの購買履歴などから、ある程度、把握しています。アマゾンの無人コンビニは、よく分かっている顧客にアプローチする能動的なビジネスといってよいでしょう。つまり、アマゾン・ゴーは、リアル店舗といってもネット・ビジネスの延長線上に存在しているわけです。
同じ小売業といっても、両者には天と地ほどの違いがあります。今後、こうしたAI型店舗が増えてきた場合、小売というビジネスは、望むと望まざるとに関わらず、そしてリアルなのかネットなのかに関わらず、ビジネス・モデルのネット化が求められます。この動きに対応できなかった小売店は生き残りが難しくなるでしょう。
ここで重要なのは、ネットかリアルかという問題ではありません。リアルであれネットであれ、ビジネス・モデルを「ネット化」できたのかがカギを握ることになるのです。