失業率の低下がさらに進んでいます。失業率が下がると賃金が上昇し、物価も上がるというのが経済学の常識ですが、日本ではなぜかそうなっていません。
総務省が発表した2017年11月の完全失業率は前年同月比0.1ポイント低下して2.7%となりました。この数字は実は24年ぶりの低水準です。
日本の失業率はリーマンショック前後に5%台まで上昇しましたが、その後は一貫して低下が続いてきました。一般に人手不足は景気が絶好超の時に発生しますが、今の日本経済がそのような状態でないことは誰に目にも明らかです。それにもかかわらず失業率が低下しているのは人手不足が深刻になっているからです。
2000年以降、34歳以下の人口は2割も減りましたが、逆に高齢者の人口は4割以上も増えました。高齢者は生産活動には従事しないものの、消費者であることには変わりありませんから、需要は減りません。需要が減らない中で、生産に従事する世代の人口が減っているので、失業率が低下するわけです。
ここまではファクトベースのニュース解説ですが、ここからは筆者の見立てです。
日本でも経済学の常識が通用するなら失業率下がればインフレに
経済学の常識では失業率が低下すると賃金が上昇し、その結果、物価も上昇するとされています。しかし日本では失業率がこれだけ下がっても賃金は上昇しません。最大の理由は終身雇用制度でしょう。
終身雇用の場合、企業は従業員の雇用を半永久的に保障する必要があるため、賃金は抑制されます。女性の社会進出が遅れていることも、賃金が上がらない要因のひとつとみてよいでしょう。結婚退社した女性が再度、労働市場に戻って来る時には、非正規社員であることが多くます。結果として給料は下がります。
しかしいくら日本に特殊事情があるからといって、いつまでもインフレにならない保障はありません。歴史を遡ると人手不足が深刻化するとたいていの場合、インフレになっています。
日本の過去のインフレ率などを調べてみると、失業率が2.5%を切ると、急激に物価が上昇するという現象が観察されます(フィリップ曲線)。今はデフレ一色という雰囲気ですし、いつインフレになるのか正確に予想することは予言者でもない限り不可能でしょう。
しかしながら、経済学の常識が通用するなら、そして歴史を教訓とするなら、失業率が下がればいつかはインフレになります。そのタイミングがそろそろ近づいているのかもしれません。