経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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日本の若者はネガティブ思考?

 日本の若者は、諸外国と比べて自己を否定的に捉える傾向が強く、自分自身に満足している割合がもっとも低いという内閣府の調査結果が話題になっています。

 これは、内閣府が2014年6月3日に公表した2014年版「子ども・若者白書」に掲載されてたものです。
 白書では毎年、テーマを設定したうえで大規模な調査を実施しているのですが、今年のテーマは若者の意識です。日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の若者を対象にした意識調査を行い、その結果を分析しています。

基本的に日本の若者は後ろ向き
 それによると、自分自身に満足しているという若者の割合は、日本は45.8%と7カ国中最低でした。トップは米国で86.0%、2位はフランスで82.7%です。

 自分には長所がある、うまくいくか分からないことにも意欲的に取り組む、といった指標でも日本はやはり7カ国中最低となっています。さらに、つまらないと感じたことがある、憂鬱だと感じたことがある、という若者の割合は7カ国中で断トツのトップでした。

 基本的に日本の若者は自己に対して否定的で、後ろ向きであるようです。

 このような結果が出たからといって、日本人が本当にネガティブなのかどうかは分かりません。日本人はこうしたアンケートに対しては、匿名であっても、周囲の目を気にして、本心とは違うことを書く可能性があるからです。

 OECDが行った調査では、日本人は自分のことを不健康だと考える割合がもっとも高いという結果も出ています。日本は断トツの長寿国ですが、自身のことは極めて不健康だと考えているのです。やはり全体的には、自らを否定的に考える傾向が強そうです。

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教育環境の影響は大きいか?
 こうした思考回路は、生まれつきのものなのか、後天的なものなのかは、実はよく分かっていないのですが、教育環境がそれなりに影響している可能性は高いといってよいでしょう。

 日本の学校や地域社会では、ハキハキと自己主張するタイプの子はあまり評価されません。周囲の様子を伺いながら、控え目に行動している方が安全であり、こうした習慣は小さい頃から徹底的にたたき込まれます。

 周囲が同じような人ばかりが集まっている同質的なムラ社会では、こうした行動習慣はむしろ望ましいものといえるかもしれません。

 しかし、人種、宗教、言語、文化など、異なるバックグラウンドを持つ人がぶつかり合う現代社会では、周囲の様子をうかがってばかりの人材では、大きな成果を上げることはできません。

 日本では理解よりも共感が求められますが、それはむしろ反対です。自分と異なる人に共感する必要はまったくありませんが、相手を理解し、交渉したうえで必要に応じて受け入れるという能力は必須となります。

 こうした行動ができる人材を育てるには、やはり自身の考えをしっかりと主張し、一方で他人の意見を聞く訓練が必要となるでしょう。こうした訓練を積んでいけば、自己に対する評価もおのずと変わっていくと考えられます。

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