出版や映画を手がけるメディア企業のKADOKAWAと、動画配信大手のドワンゴが経営統合することになりました。
日本企業の合併は、リストラを避けたいだけというケースも多いのですが、この合併は双方を補完する形となっており、うまく機能する可能性があります。
相互に足りない部分をうまく補完
KADOKAWAは、角川書店を中心に、アスキー・メディアワークス、メディアファクトリー、中経出版などから8つのブランドからなるメディア企業です。
もともとは文芸出版社だったのですが、角川春樹氏が社長に就任してからはエンターテインメント路線に転換、薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃」など、文庫本と映画などセットにするメディアミックス手法で一時代を築きました。
年配の人であれば、角川映画に夢中になったという人は結構多いかもしれません。
その後、パソコン雑誌で有名だったアスキーなどを傘下に収め、現在では総合的なメディア企業になっています。
しかしながら、書籍と雑誌に依存する旧態依然の体質は変わっておらず、2014年3月期の売上高1500億円のうち、4割が書籍、2割が雑誌関連で占められています。デジタル系のコンテンツは全体の1割強しかありません。売上高も前年比6.5%減少しています。
一方のドワンゴは、最近でこそ業績は好調ですが、その収益は「ニコニコ動画」などを展開するniconicoの有料会員増加によって支えられている面が強くなっています。
有料会員からの売上げは年間120億円近くにのぼっており、同社全体の売上げの3分の1を占めています。ドワンゴとしては、有料会員に依存する収益構造からの脱却を図りたいところです。
コンテンツを持っていてもデジタルで利益にできないKADOKAWAと、配信プラットフォームを持ちながら、コンテンツをうまく作れないドワンゴが組むという形ですから、双方の弱いところを補完しているわけです。
後継者指名という側面も
また、今回の合併には、KADOKAWA会長の角川歴彦氏から、ドワンゴ会長である川上量生氏への後継者指名という側面もあります。
角川歴彦氏はその名前から分かるように、旧角川書店の創業一族の出身です。兄の樹氏が1993年に麻薬取締法違反で逮捕されたことをきっかけに、歴彦氏は社長に就任し、着実に経営を行ってきましたが、そろそろ引退する年齢です。歴彦氏にとっては、後継者への継承をしっかりしておきたいところでしょう。
一方、ドワンゴ会長の川上量生氏は現在45歳。京都大学卒業後、サラリーマンを経て1997年にドワンゴを創業した若い経営者です。
統合後の持株会社の会長には川上氏が就任し、角川氏は相談役に退きます。実質的にこの合併は、ドワンゴ経営者の川上氏をKADOKAWAとドワンゴ両社の後継者に据えるためのものだったと解釈することができます。
新聞報道などでは、「日本のコンテンツを世界に発信し、グーグルやディズニーと戦う」といった見出しも並んでいました。
残念ながらグローバルにコンテンツを提供するディズニーやIT業界の巨人であるグーグルとは、あまりにも規模の差がありすぎ、同じ土俵で戦うという立場ではありません。
しかし、日本のサブカルに対しては一定の需要があることは間違いなく、今後、両者連合が海外の市場開拓を進めていける可能性は十分にあるでしょう。