日本の株式市場が好調です。1月には1万7000円を切る場面もありましたが、その後は連続して上昇し、1万9000円目前という状況となっています。背景には何があるのでしょうか。
理論的には2万円を超えてもおかしくない
いわゆるファンダメンタル的に考えると、日経平均がこの程度の価格になることは十分に予想されていましたし、まだ上がる余地があります。
株価水準を評価する指標のひとつにPER(株価収益率)があります。これは、株価を1株あたりの利益(EPS)で割って計算します。2月中旬時点での、日経平均採用銘柄のEPSは約1105円、株価は1万8000円でしたから、PERは16.3倍となります。
一方、2015年3月期の決算では増益を見込む企業が多くなっていますし、2016年3月期もさらに増益となる可能性が高いといわれています。企業の収益予想は、比較的信用できる数値と考えてよいものです。
2015年3月期のEPSが1200円程度、2016年3月期のEPSが1300円程度であれば、また現在のPERが継続したと仮定すれば、理論的な株価はそれぞれ、約1万9500円、2万1200円となります。市場環境が大きく変わらない限り、株価はまだまだ上昇する可能性があるわけです。
実際、その後の株価は順調に上がっていき、実際に1万9000円を突破するかという段階まで来ています。しかし、現実の株価は理論通りに動くというものでもありません。もっと生々しい理由で株価は上下しています。
最近の市場で株価上昇の大きな要因になっているのは、まちがいなく公的年金による「買い」と思われます。
官製相場との声も
安倍政権は、今後インフレが進行する可能性があることから、公的年金の運用方針の見直しを積極的に進めてきました。
昨年10月にまとまった新しい運用方針では、国債の比率を60%から35%に下げる一方、国内株の比率を12%から25%に拡大しました。外国株を合わせると株式の比率は50%に達します。
このポートフォリオ変更については、日本人の老後の財産である年金をリスクの高い株式に託してしまって大丈夫なのかという議論がありましたが、実際には、新しい指針が発表される前から、すでに株式シフトが始まっていたのです。
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)における2014年3月末の株式保有残高は約21兆円だったのですが、6月末には22兆円に、9月末には24兆円に、12月末には27兆円にまで増加しています。つまり、新しい方針が発表される前から継続して株式を購入していたことになります。
これは株式の売買動向の統計からも裏付けられます。公的年金と思われる買いが、2014年4月以降、継続して行われており、累計で2兆8000億円程度の買い越しとなっているのです。
公的年金は、日経平均が急落した局面でより積極的に株式を購入しています。2014年5月の株価下落局面では、公的年金が2カ月間で9000億円、2014年10月の急落局面では、1カ月で7000億円の資金が投じられました。現在の株高は間違いなく私達の年金によって支えられていると考えてよいでしょう。
公的年金にはまだ4兆円ほどの購入枠がありますし、公務員共済や教職員の共済など、他の公的年金も株式シフトを進める予定であり、まだまだ買いは続きます。さらには、上場が予定されているゆうちょ銀行の運用についても、株式にシフトさせようという動きもあるようです。
しばらくは、好調な相場が続きそうですが、こうした動きについて、市場関係者の一部からは官製相場だとの声も聞かれます。確かにこれらの恣意的な買いがなくなった時、日本経済が成長するという見込みが立っていなければ株価が暴落する可能性もゼロではありません。
ただ、当分の間、公的な買いが継続して入ってくる状態であり、とりあえず株価は上昇基調と考えた方がよさそうです。