米アップルが驚くべき決算を発表しました。中国向けiPhoneが絶好調で、売上高が前年同期比で30%も増加したのです。
同社はパナソニックやソニーといった日本を代表する電機メーカーを上回る規模を持っていますが、こうした巨大企業の売上げが一気に3割伸びるというのはかなりのインパクトです。
日本の大手メーカーの年間売上高を3カ月で超える
米アップルは2015年1月27日、2014年10~12月期の決算を発表しました。売上高は前年同期比30%増の745億9900万ドル(約8兆8800億円)、純利益は37.9%増の180億2400万ドルと大幅な増収増益となりました。
四半期の決算で約9兆円の売上高というのは驚異的な数字です。この規模は、ソニーやパナソニックなど、国内最大手の電機メーカーが1年間かけて達成する数字です。これをアップルはわずか3カ月でたたき出してしまうわけです。
これほどの伸びとなったのは、中国市場向けのiPhoneが絶好調だったからです。iPhoneのこの四半期における販売台数は7446万8000台で前年同期比で46%増となっています。iPhoneは日本を除くすべての地域で売上げを大幅に拡大しているのですが、特に中国市場の伸びが大きいといわれています。台数ベースでは、北米市場を超えている可能性が高いでしょう。
中国向けのiPhoneは単価が安く、当初は、台数は稼ぐことができても、収益にはあまり貢献しないという声もありました。しかし、こうした問題についても、台数さえ多ければ、スケールメリットを享受できるようになり、結果的に大した話ではなくなります。まさに今のアップルはそのような状況になったといってよいでしょう。
今回の同社の決算はいろいろな意味で大きな分岐点となるかもしれません。
アップルは、世界中で製品を販売していますが、何と言っても米国の会社であり、主戦場は北米市場でした。これまでは台数ベースでも、金額ベースでも、北米市場が基準だったわけです。しかし、ここまで中国向けの出荷台数が増えてくるとなると、その状況も変わってきます。
すぐに製品コンセプトが変わることはないでしょうが、製品の開発コンセプトも徐々に、中国市場を意識したものになってくるはずです。サービス拠点もさらに中国へのシフトが進むかもしれません。
ひょっとすると中国市場の転換点に?
一方、高価なiPhoneが中国市場でも絶好調だということは、中国市場がかなり成熟化してきていることのサインであるとも考えられます。
中国市場は、利用者の購買力の違いから、これまで高価な製品は売りにくいといわれてきました。中国市場には、低価格を武器にした小米(シャオミ)やレノボといった国内メーカーがひしめいています。
いくら価格を抑えてあるといっても、高価なiPhoneは、中国では富裕層以外には浸透しないという声もあったわけです。
しかし今回の決算はそうした見立てが誤りであったことを示しています。ローエンドのスマホとハイエンドのスマホという棲み分けはできているものの、ハイエンドな製品でも十分に売れる余地があることがはっきりしたわけです。
これはアップルのような欧米のIT企業にとっては、ビジネスモデル上の大きな転換点となる可能性があります。
欧米市場と同じようなクラスの製品でも十分に販売できる余地がある、ということになると、本格的に中国市場に軸足を移す企業が登場してくる可能性が出てくるからです。
市場では、アップルは、すでに成長余地をほとんどなくしているとの見方も出ていました。しかし、ひょっとすると、同社の収益拡大はこれからなのかもしれないのです。