経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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IMFの最新世界経済見通し。米国経済だけが絶好調なワケ

 IMF(国際通貨基金)はこのほど、2015年の世界経済見通しを発表しました。全世界の実質GDP成長率は、物価変動の影響を除いた実質でプラス3.5%となり、10月時点の見通しから0.3ポイント引き下げられました。

 欧州、日本、中国の景気失速が大きく影響した恰好です。一方で米国は、プラス3.6%と前回見通しから0.5ポイントも引き上げとなりました。米国一人勝ちの状況がさらに顕著になっています。

米国一人勝ちがより顕著に
 世界経済が大きく減速していることは、かなり以前からはっきりしていましたから、今回、IMFが成長見通しを引き下げたことは予想の範囲内です。

 ユーロ圏の成長率は、0.2ポイント引き下げられ1.2%となったほか、日本は0.2ポイント引き下げられプラス0.6%にとどまりました。

 ロシアはウクライナ問題による経済制裁に加え、石油価格下落の影響を大きく受けており、成長率はマイナス3.5%まで下落する見込みです。中国も無理な成長はしない方針を明確にしていますので、世界全体の成長率も低下することになります。

 この中で、唯一の例外が米国です。米国はプラス3.6%と前回見通しから0.5ポイントも上方修正となりました。米国は量的緩和策がうまく機能し、リーマンショック後の危機から完全に脱しています。この状況にさらに拍車をかけそうなのが、原油価格の下落です。

 原油価格の下落は、採掘コストが高く、国家財政の多くを石油に依存しているロシアなどに対して壊滅的な影響を与えています。

 米国はシェールガスの開発によって、今や世界最大の産油国でもあるのですが、米国の場合、世界最大の石油消費国でもあります。原油価格の下落によって採算割れに追い込まれるシェールガス事業者が出てくる可能性がありますが、ガソリン価格の下落などによって、消費が拡大する効果の方が圧倒的に大きいでしょう。

 米国は原油価格が上がればシェールガス事業者が増産することで、相対的に他国よりも安く原油を調達できますし、原油価格が下がれば、消費市場がその恩恵を受けることになります。基本的にどちらに転んでも米国は有利な立場にあるわけです。

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原油価格下落の経済効果は日本が10兆円、米国は20兆円
 原油価格が100ドルから50ドルに下がると米国には年間20兆円規模の資金が転がり込んできます。日本も10兆円くらいの経済効果があるのですが、日本の場合、恩恵を受けるのはほとんどが企業です。
 しかし日本企業は、昔ほど製造業における競争力がありませんから、エネルギーコストの低下によって得られる効果はそれほどでもありません。

 しかし米国の場合、GDPの7割が個人消費であり、ガソリン価格が下がると、浮いたお金はそのまま消費拡大に結びつきます。
 すでに米国では燃費の悪い大型車がガソリン価格の下落によってバンバン売れています。おそらく今年の後半から来年にかけては、さらに消費が伸びてくる可能性が高いでしょう。

 IMFのレポートは、今後、しばらくの間、世界経済は米国中心に回るということを示しています。投資やビジネスも基本的にそのことを頭に入れておいた方がよいでしょう。

 唯一のリスク要因は、ロシアなど産油国が経済危機に陥り、その影響が米国にも及ぶことです。世界経済の牽引役は米国しかいませんから、その米国がコケてしまうと、世界経済は総崩れになります。

 基本的には好調な米国が経済が続くという見立てでよいと思いますが、ロシア経済崩壊のリスクについては、当分の間、頭の片隅に置いておいた方がよさそうです。

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