経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

国内経済が弱いのに日経平均2万円という声が出てくる理由

 今年の大発会は、昨年末の大納会の終値を42円下回る1万7408円で引けました。年末年始の米国株が冴えない展開だったことから、売りが先行したようです。

国内経済と株価は乖離している
 2014年は国内の経済状況と株価が乖離した年だったといってよいでしょう。

 本格的な景気回復が期待されていながら、物価が伸び悩み、消費増税などの影響によって7~9月期のGDPはマイナス成長に転じてしまいました。

 一方、株価は思いのほか堅調に推移しました。特に日銀の追加緩和以降は円安が進み、株価は大幅上昇となりました。
 2015年も国内の景気見通しはあまり良くありませんが、昨年と同様、株価と景気が連動しない状況が続く可能性が高いと考えられます。市場関係者の多くが、2015年中に日経平均が2万円を突破する可能性が高いと予想しています。

 国内の景気が良くない状況であるにも関わらず、株価に対して前向きな見通しが出てくるのは、日本企業の「儲け」の構造が変わってきたからです。
 
 これまで日本の製造業は、原材料を仕入れ、日本国内で製造して海外に輸出していました。しかしグローバルな競争が激しくなり、こうしたやり方ではコスト競争に勝つことができないため、日本企業の多くは、海外に製造拠点を移していきました。

 現在では多くの企業が現地で生産し、現地の顧客に製品を販売しています。つまり製造業は輸出型ではなく、地産地消型になっているわけです。

 世界景気は、欧州と中国が不調ですから、成長鈍化が予想されています。しかし、最大の経済大国である米国の景気は今のところ非常に好調です。日本の製造業は北米市場に大きく依存していますから、米国の景気が良ければ、日本企業の業績も向上する仕組みになっているのです。

 米国の好景気に加え、円安が進んだことで、円ベースに換算した企業の売上げや利益は大きく伸びました。国内の景気がぱっとしないにも関わらず、企業の業績が堅調なのはこうした理由からです。
 つまり国内経済と企業の業績に乖離が生じており、海外の利益を取り込める経済圏とそうでない経済圏との間で二極分化が起こっているわけです。

tosho2015

企業の利益予想を現在の株価水準にあてはめると2万円超えも可能

 2015年は、この傾向がさらに顕著になりそうです。

 2015年3月期における、日経平均採用銘柄のEPS(1株あたり利益)予想は約1100円です。しかし、この数字は1ドルが100円前後の為替レートを想定しています。実際には円安が進んでいますから、利益予想は1200円程度まで上昇する可能性が高いでしょう。

 株価の割高、割安を図る指標にPER(株価を1株あたりの利益で割った数字)というものがありますが、日本企業のPERは現在、約16倍となっています。

 1200円の利益予想にこの株価収益率をあてはめると日経平均は1万9200円と計算されます。来年後半は2016年3月期の決算まで織り込んできますから、場合によっては、日経平均が2万円を超える可能性もあるわけです。

 ただし今年の前半は少し注意が必要かもしれません。その理由は原油価格が急落しているからです。

 原油価格の下落は中長期的には経済にプラスの影響を与えます。しかし、今回は下落のスピードがあまりに大きく、ロシアやベネズエラなど、経済が脆弱な産油国に大きな影響を与えています。新興国通貨の下落や資金流出などが発生し、市場が混乱するような事態となれば、株価も一時的には下落するでしょう。

 しかし、長い目でみれば、原油価格が安いことは、消費国に大きなメリットをもたらします。基本的には前向きにとらえてよい話だと思います。

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