インターネットの通話サービスを手がけるSkypeが、人工知能を使った同時通訳の試験運用を開始しました。今のところ英語とスペイン語だけですが、いずれは各国の言語に広がっていくでしょう。
日本語と英語のサービスが実用レベルに達することになれば、ビジネスの世界に極めて大きなインパクトをもたらすことになります。これはあらゆる人にとって大きなビジネスチャンスです。
人工知能によって翻訳の精度が劇的に向上
Skypeのサービスには人工知能の技術がふんだんにつかわれています。話し手が英語でしゃべると、音声認識機能で話している内容がテキストに変換され、その後、機械翻訳によって言語が変わり、今度は翻訳されたテキストが再び音声に変換されます。
こうした処理をごく短時間に行うため、話している人にとっては同時通訳という形になるわけです。画面の横にはテキストも表示されますし、言い直しなどにも対応するそうですから、ストレスのないやり取りが実現できるかもしれません。
こうした自然な翻訳というのは、従来のコンピュータ・システムでは実現できないものでした。従来の翻訳は、大量の英文と日本文を同時に読み込ませ、その変換パターンを単純に覚えさせているだけだったからです。
つまり、コンピュータ側は、言語を単なる情報として扱っているだけで、言語そのものを認識してはいなかったのです。
しかし人工知能の技術を使うと、単語と単語の関係や、文のニュアンスなど、抽象度ごとに区分された階層で、意味を理解することができるようになります。これによって、「変な翻訳」になる確率を下げることができるようになりました。
英語とスペイン語は、言語の構造が似ていますから、実用化が早かったと考えられます。日本語と英語はまだ実用レベルではないと思われますが、それも時間の問題です。Skypeなどを使って、外国人とリアルタイムでやり取りできる日は、もう間もなくやってくるでしょう。
多くの個人にとって、とてつもないビジネス・チャンスとなる
これは多くの人にとって途方もないビジネスチャンスとなります。これまで言語がカベになって実現できなかったことは無数にあるからです。
単純なモノの売り買いでしたら、Google翻訳と電子メールをフル活用することで、海外とのビジネスを行うことができます。障壁になっているのは、気持ちの問題だけで、多少メチャクチャな英文でも気にしないという図太さがあれば、誰にでも実現できるものです。
しかし、一緒にプロジェクトを進めていくというようなケースではそうはいきません。何度も打ち合わせをする必要がありますし、メールだけでは伝わらないことも多いからです。
通訳を入れるという方法がありますが、あまりにもコストが高く、現実的ではありません。こうした言語の障害によって実現できなかったビジネスはたくさんあるはずです。
これがインターネットと人工知能を使って誰でも実現できるようになると、状況が一変します。YouTubeで自分の特技を披露して広告料を稼いでいる人はたくさんいますが、このような人であれば、世界中の人と、有料の個別レッスンができてしまいます。
日本に来る旅行者に対して事前にガイドやアドバイスをすることもできますし、海外の不動産売買もずっとラクになるでしょう。下手をすると、国内で環境が整っていない遠隔地の不動産を買うよりも、ネットで外国の不動産を買う方がずっと簡単というケースも出てくるかもしれません。
自分が持っている知識や特技が、通訳という障壁をなくすことで、突然、グローバルに通用する可能性が出てくるわけです。これはちょっとした革命といってよいでしょう。