外国の駐在員が働きたい国ランキングで日本が最下位から2番目という調査結果が話題になっています。個別項目を見ると、賃金やワークライフバランスなど、日本人にとっても重要なポイントが軒並み低ランクでした。外国人にとって魅力的な街は日本人にとっても魅力的であるという現実がよく分かる結果といってよいでしょう。
賃金が高いことはやはり重要
調査を行ったのは、香港と英国を拠点とする金融大手HSBCホールディングスです。同社は2019年7月、「各国の駐在員が働きたい国ランキング」の最新版を発表しましたが、日本は調査対象33カ国中32位というショッキングな結果となりました。
ランキング1位はスイス、2位はシンガポール、3位はカナダ、4位はスペイン、5位はニュージーランドとなっており、日本より評価が低い最下位の国はブラジルでした。
上位に並んでいる国は2種類に大別することができます。ひとつは高賃金です。スイス、シンガポールがその典型ですが、賃金が圧倒的に高いという特長があります。幸福感やワークライフバランスといった項目のポイントは低いのですが、高い賃金と充実したビジネス環境が全体の順位を押し上げました。
世の中には、ハードワーカーと呼ばれる人が一定数存在していますから、こうした人たちにとっては、スイスやシンガポールは魅力的な街ということになるでしょう。
一方、カナダ、スペイン、ニュージーランドといった国は、賃金はそこそこですが、ワークライフバランスや満足度といった項目の点数が高く、これが総合順位を押し上げています。実際、上記3国はガツガツ仕事をする国ではありませんから、調査結果と社会の雰囲気は合っているといってよいでしょう。
日本人にとって魅力的であることは外国人にとっても同じ
もっとも、ワークライフバランスが高い国は、それだけで点数を稼いでいるわけではなく、賃金も相対的に高めであるという点に注意する必要があります。いくら残業時間が少なくても、生活が苦しい状況では、全体的な満足度は向上しません。教育環境も同様で、教育インフラが貧弱な国は敬遠されているようです。
こうした状況を踏まえて、日本の個別評価を見てみると、厳しい現実が浮かび上がってきます。
日本のランキングが著しく低いのは、何かが大きく足を引っ張っているのではなく、すべての項目において評価が低いことが原因です。具体的に言うと、賃金については最下位、ワークライフバランスについても最下位、子どもの教育環境についても最下位でした。
低賃金、長時間残業、教育水準の低下は、今の日本人にとっても重要なテーマです。こうした比較調査の結果に対しては、諸外国と比較しても意味がないといった批判の声もあるのですが、そんなことはありません。これらの3つの項目が重要であることは、どの国の人にとっても同じであり、国籍には関係しません。
日本という国は、日本人にとっても住みにくい国となりつつあります。逆に言えば、わたしたち自身が諸問題にしっかり対処すれば、自動的に対外的な評価も上昇するということを、この調査結果は示しています。