かつて、カリスマ予備校講師として一世を風靡した「金ピカ先生」こと、佐藤忠志氏が孤独死しました。一時は年収が2億円にも達していたそうですが、晩年は生活保護に頼らざるを得なかったようです。佐藤氏は、亡くなる直前、わざわざメディアの取材に応じていますから、何かを後世に伝えようとしていたのかもしれません。
年収が増えた分だけ消費を増やしてはいけない
佐藤氏の全盛期の年収は2億円を超えており、何台ものクラシックカーを乗り回し、8億円の豪邸まで建てたそうです。しかし、その後も浪費をやめることができず、ほとんどの貯金を使い果たしてしまいました。
ネット上では、年収が2億もあったのだから、お金を残せないのはおかしいという意見も目にします。確かにその通りで、結果として無一文になってしまったのは100%佐藤氏の自己責任です。しかし、人というのはそれほど強いものではなく、収入が上がると、それ以上に支出が加速してしまう人は一定数存在します。
しかも困ったことに、これは佐藤氏のように、多額のお金を稼いだ人だけの話ではありません。ごく普通のサラリーマンでも、支出が過剰になっている人は少なくないのです。つまり、佐藤氏を浪費家だと批判している人の中にも、金額こそ、佐藤氏と比較すれば、ごくわずかですが、浪費体質になっている人がたくさんいるはずです。しかも困ったことに、たいていの場合、自分が浪費体質だとは気付いていません。
一定割合の人は、年収が増えると、その先はもっと増えると考えてしまいます。しかも、すべての人が、単なる楽観論でそう認識しているのではありません。
人間のマインドというのはやっかいなもので、年収が上がるという甘い見通しを正当化するために、自分はこんなにがんばっているのだからもっともらって当然だといった形に、徐々に思考回路を変えてしまうのです。
40歳の年収を基準に、増えた分はすべてストックに回すべき
日本の場合、累進課税という制度になっており、これがさらに状況を悪くします。分かりやすく言えば、日本の所得税は、お金持ちからムシり取るシステムですから、年収が上がるほど、税率が高くなります。所得税には控除がありますから、実際の税率は名目値よりもずっと低く、年収500万円以下の人の場合には、所得税に限っては、実質的に無税に近くなります。
しかし年収800万円を超えたあたりから税率の上昇が顕著となり、1500万円を超えると控除を入れても14%以上、2500万円以上では40%が税金で持っていかれます。
収入が増えて、支出が増えているにもかかわらず、税金によって可処分所得の比率は減るという状況ですから、自分の想像以上に手元の現金は減っていくのです。
多くの人は佐藤氏ほどの出費はできませんから、豪邸やクラシックカーではないかもしれませんが、ちょっとした高級車や、子どもの習い事、新築マンション、ウォーターサーバーなど、過剰支出体質になっている人は少なくありません。こうした消費先行型のライフスタイルは、最終的には老後の生活を直撃することになります。
厳しいようですが、40歳くらいの年収を基準に、それよりも年収が増えた場合には、ラッキーと考え、差分は全額貯蓄か投資に回した方がよいでしょう。投資の残高が増えてくれば、フローではなくストックで自動的にお金を生み出せるようになりますから、老後の生活水準は天と地ほどの違いになるでしょう。