2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。もっともプログラミング教育といっても、専門の科目ができるわけではなく、算数や理科の中でプログラムが取り上げられるという形です。教育内容もプログラミング言語を学ぶというよりは、ITの仕組みを理解するといったところに重点が置かれるようです。
専門の科目ができるわけではない
文部科学省は2019年3月、全国の小学校で2020年度から使われる教科書の検定結果を公表しました。算数や理科の教科書には今回から必修となるプログラミングが盛り込まれました。
プログラミング教育については賛否両論があります。プログラミング言語は時代とともに変化しますから、単に言語だけを学ばせても意味がないというのはその通りでしょう。必修化にあたってはこの点についてもかなり議論されたようです。
今回、教科書に登場するプログラミングもこうした議論を反映しており、例えば、小学校の理科では「明かりの制御」といった形でITの基本的な考え方を学ぶ構成になっています。
今の時代は社会のあらゆる領域でITが活用されますから、ITというのは専門知識というよりも一般教養に近い存在と考えてよいでしょう。今回、検定された教科書は、必修化の第一歩としてはまずまずといったところだと思います。
まずはパソコンの普及が重要
しかしながら、プログラミング教育には、様々な課題もあります。もっとも大きいのは、パソコンが普及していないという問題です。
意外に思うかもしれませんが、日本は先進国の中では突出してパソコンの普及率が低い国として知られています。諸外国では子どものうちからパソコンを保有しており、学校の宿題をパソコンで行うケースも珍しくありません。日本ではスマホは普及しているので大丈夫だという意見もありますが、そうとは言い切れないでしょう。
諸外国ではスマホも日本と同じくらい普及していますが、それに加えてパソコンも保有しているケースが圧倒的に多いのです。つまりハードの特性に合わせて、コミュニケーションはスマホで、知的作業はパソコンで、といった具合に使い分けが出来ているのです。
ITのスキルを身につけるためには、論理的思考や抽象化といった能力が必要となりますが、ハードウェアという形而下の操作に慣れることで、形而上学的な思考が身に付くという側面もありますから、ハードに慣れることは非常に重要です。
プログラミングに興味を持つ子どもであれば、パソコンさえ与えておけば、あとは勝手に学び始めるはずです。プログラミング教育を成功させるためには、子どもにもっとパソコンを普及させることが重要でしょう。