経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 政治

米国が敵視する中国の華為技術(ファーウェイ)はどんな企業?

 米国をはじめとする各国の政府調達から除外されたり、CFO(最高財務責任者)がカナダで一時、身柄を拘束されるなど、中国の通信機器メーカー(ファーウェイ)をめぐる各国の政治的な駆け引きが活発になっています。

 日本でも同社製品は広く流通していますし、ソフトバンクが基地局の機器に採用するなど、様々な影響が考えられますが、米国が敵視する華為技術とはどのような会社なのでしょうか。

非上場のため経営実態はあまり知られていない

 華為技術は従業員数18万人、全社売上高10兆円を超える中国の巨大通信機器メーカーですが、その経営実態はあまり知られていません。

 本社は深センにあり、東京ディズニーランド4つ分という広大な面積となっています。敷地内には、食堂はもちろん、病院や美容院、ジム、コンビニなど、ありとあらゆる施設が揃っており、社内で生活のすべてが完結するともいわれています(写真)。

 これほどの大企業であるにもかかわらず、経営実態が知られていないのは、同社が非上場企業だからです。これに加えて同社の創業者である任正非氏があまり人前に姿を現わさないということも大きく影響しているでしょう。

 同社の株主は創業者の任氏と社員で占められており、外部の株主はほとんどいないといわれています。会社のトップとしてメディアなどに登場するのは、主に内部昇格した経営者ですが、彼等は輪番制となっており、1人に権力が集中することがありません。一方、会社の財布を握るCFOには実の娘である孟晩舟氏を就任させており、会社全体に財務の部分から目を光らせています(カナダで一時身柄を拘束されたのは孟氏)。

 任氏は社員を株主にして要職を輪番制にするとともに、財務責任者に身内を充てることで、わずかの株式シェアであるにもかかわらず、全社を実質的に支配することに成功しています。

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中国の産業政策に対する誤解

 任氏は人民解放軍に技術者として勤務していた経歴があり、同社は軍と一体の企業とみなされることもしばしばです。現状においては中国トップの通信機器メーカーですので、軍や諜報機関との関係が密接なのは当然といえば当然ですが、同社が成長してきた過程においては、必ずしもそうとは言い切れません。

 同社の創業は1990年代ですが、当初は交換機を販売するだけの企業であり、中国共産党や政府から支援を受ける立場ではありませんでした。しかし、その後、交換機の国産に踏み切り、中国政府が国産の通信機器を重視するようになったこともあり、中国での立場は大きく変わりました。

 日本では中国の産業政策について、国が積極的に企業を育成しており、企業と政府は一体とのイメージが強いのですが、同社をはじめとする中国企業の成長過程を見ると、必ずしもそうとは言い切れません。むしろ自由に競争させ、その中で頭角を現わしてきた企業と政府が密接な関係を結ぶという状況に近いと思われます。

 日本は、中国に対する強い警戒感を持っているにも関わらず、中国に対する情報収集や分析にはあまり積極的ではありません。
 情報(インテリジェンス)はすべての基礎となるものであり、警戒が必要な相手であれば、なおさら情報のアンテナを張っておく必要があるでしょう。日本において、中国に関するまっとうな情報が少ないことは、非常に危惧されるべきことです。

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