グーグルが、傘下の動画配信サイト「ユーチューブ」の大幅なサービス改変に乗り出しました。ネットのコンテンツ市場は変革期を迎えており、グーグルによるサービス改変は、その号砲となるかもしれません。
グーグルは音楽サービスをユーチューブに統合
米グーグルは2018年11月14日、傘下のユーチューブにおいて、音楽の定額配信サービス「ユーチューブ・ミュージック」をスタートすると発表しました。米国やドイツでは2018年6月にサービスを開始しており、日本では少し遅れてのサービス開始となります。
ユーチューブ・ミュージックには、無料のサービスと有料のサービスがあり、無料のサービスには広告が入ります。一方、広告が入らない有料のサービスはアンドロイド向けが月額980円、アップルのiOS向けは1280円となっています。
説明するまでもありませんが、ユーチューブ・ミュージックは、音楽配信サイトとして圧倒的なポジションを確立しているスウェーデンの「スポティファイ」を強く意識したものといってよいでしょう。グーグルはこれまで音楽配信サービスとして「Google Playミュージック」というサービスを提供してきましたが、先行するスポティファイとの距離は縮まりません。
一方、グーグルは動画配信の分野では、ユーチューブという圧倒的なプラットフォームを持っています。同社はユーチューブ・プレミアムがスタートしたことをきっかけに、将来的には動画のサービスと音楽のサービスを統合する方針を示しています。
つまり、ユーチューブが持つ圧倒的な顧客基盤を使って、音楽配信の分野で先行するスポティファイに追いつくというのが、同社の当面の戦略と考えてよさそうです。
いよいよ動画配信サイトがテレビを超える?
ここで重要となるのが、なぜ今がタイミングなのかということです。ヒントとなるのは同時に発表されたユーチューブの新しい有料サービス「ユーチューブ・プレミアム」でしょう。
このサービスの最大のウリは、月額料金を支払うことで、動画の前後などに配信される広告がカットされるという点です。グーグルは収益のほぼすべてを広告に依存しており、広告は同社の生命線といってよい存在です。それにもかかわらず、同社が広告なしの有料動画サービスを加えたことは、大きな方針転換といってよいでしょう。
こうした変化の背景には、ユーチューブが標準的な動画プラットフォームとしての基盤をほぼ確立し、今後、テレビと並ぶ、もしくはテレビを超える存在になり得るとのグーグル側の判断があると考えられます。
有料にしても顧客が逃げないのであれば、そして、ユーチューブがテレビ並みのプラットフォームだとするなら、広告が入る無料サービスや、質の高い有料サービスなど、利用者のニーズにあった形で、複数のサービスが共存できるはずです。
もしこのシナリオが本当なのだとすると、近い将来、コンテンツ市場には極めて大きな変化が訪れる可能性があります。今後のグーグルの動画戦略には注目していく必要がありそうです。