経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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米中間選挙の結果で世界経済はどうなる?

 米国の中間選挙は民主党が下院の過半数を制するという結果になりました。上院と下院で多数派が異なる、いわゆる「ねじれ議会」となったわけですが、今後の世界経済にはどのような影響が及ぶのでしょうか。

トランプ氏が穏健になるとは限らない

 2018年11月6日に投開票が行われた米国の中間選挙は、与党・共和党が上院で多数派を維持する一方、下院は民主党が過半数を制しました。

 米国では議会のみに法案の提出権が認められていますから、トランプ大統領が立法措置を伴う政策を実施したという場合には、ある程度、民主党との妥協が必要となります。しかしながら、トランプ氏のスタンスが今回の選挙結果を受けて、より穏健になるのかというとそうとも限りません。

 共和党の当選者を見るとトランプ氏に立場が近い政治家が議席を確保する一方、主流派であっても議席を失った人がいます。トランプ氏は次の大統領選挙を見据えており、むしろより過激になるとの見方もあります。

 仮に民主党との妥協が図られるにしても、分野が限定される可能性が高いでしょう。

 移民排斥など人権問題に関わる部分において民主党が妥協するとは考えにくいですが、通商問題は状況が異なります。トランプ氏は共和党ですが、共和党はどちらかというと自由貿易主義者が多く、保護主義的なスタンスの人は少数派です。トランプ氏が過激な保護主義を掲げて支持を集めているので、それに従っているに過ぎません。

 しかし民主党の内部には、強固な保護主義者が一定数存在しています。中国や日本をターゲットにした貿易戦争に関しては、実は民主党と妥協しやすいのです。

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世界経済の先行きについてはより慎重になっておくべき

 実際、トランプ氏は選挙終了後の記者会見で、早速、日本をターゲットにした発言を行っており、通商問題を重視するスタンスを鮮明にしています。

 そうなってくると、今後の通商政策は、従来と同じか、もしくはそれ以上の保護主義に傾く可能性が高いということになります。

 もし中国が米国に対して大幅に譲歩しない場合、貿易戦争が長期化する可能性が高まりますが、これは経済にとって明らかにマイナスの作用をもたらすでしょう。

 日本の製造業の多くは、米国の旺盛な消費に支えられています。もし貿易戦争が長引き、米国の景気が鈍化するような事態となれば、日本は米国以上に大きな打撃を受けます。トランプ氏の攻撃の矛先が日本に向いた場合にはさらに状況が悪化するでしょう。

 市場では「ねじれ議会」の誕生を好感し、株価は上昇していますが、長期的に見た場合、これがどう作用するのかは何ともいえません。今後の米国経済に対しては、より慎重に見ておいた方がよいでしょう。ましてや日本経済に対してはなおさらです。

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