米国の債券市場で長期金利が上昇し、為替市場ではドル高が進んでいます。特に長期金利は節目とされてきた3%を突破しており、市場ではこの水準が定着するとの見方が強まっています。
長期金利3%台が定着する?
米国の長期金利は、2018年の初頭に2%台半ばから2%台後半に上昇し、その後、しばらくは3%を伺うレベルで推移していました。米国は量的緩和策を終了しており、金利は上昇フェーズに入っています。しかし、急激な金利上昇は景気の腰を折る可能性があることから、緩やかな金利上昇というのがFRB(連邦準備制度理事会)の基本スタンスであり、市場もそれを追認していました。
しかし9月に入って為替市場でドル高が進み、米国株も最高値を更新したことから長期金利も上昇。節目とされてきた3%を突破しました。
ドル高、株高、金利高が進んでいるのは、米国経済が堅調に推移しているからです。
米国の景気はトランプ政権による大型減税によってさらに弾みが付いており、経済指標は堅調そのものです。米国は中国との貿易戦争に突入していますが、この影響が顕在化するまでには時間がかかります。一方で、NAFTA(北米自由貿易協定)がまとまるなど、当面の不安材料が後退しており、株が買い進まれました。
景気の見通しを反映する形で金利が上がり、これが新興国からのドル資金の還流を促進。結果としてドルが買われるという図式になっています。市場では節目の3%を突破したことから、この水準の金利が定着するとの見方が強まっています。
長い目で見ると、上昇相場の終わりの始まり?
一連の動きは米国経済の強さをあらためて示したものといえますが、少し長いスパンで見た場合、異なる解釈も可能です。
リーマンショック以後、米国経済は順調に回復し、株価も右肩上がりで上昇してきましたが、そろそろ一本調子の株価上昇が踊り場に差し掛かってもおかしくない時期です。
今回、株価が最高値を更新したことから、市場は楽観ムード一色ですが、金利がハイペースで上昇しているのは少々に気になります。当面、米国景気は堅調に推移するものの、株価の上昇はそろそろ最終段階に入った可能性があり、金利の動きはその前兆なのかもしれません。
プロの投資家の多くが、同じように考えると思いますが、だからといって皆がすぐに株式から債券に乗り換えるわけではありません。株式や債券のトレーダーは常に高い利益を上げることが求められますから、来年、再来年の市場見通しよりも、今、いくら稼げるかの方がずっと重要です。
米株が上昇し、債券が下落しているなら、まずはその動きに乗らないと目先の利益は得られません。
こうした動きが市場の変動を大きくするわけですが、これは彼等の仕事柄、やむを得ないことでしょう。こうした制約に縛られない投資家であれば、今回の株価上昇はうまく利用しつつも、多少の警戒感を持って市場の様子を眺めているに違いありません。