東京都が老朽マンションの建て替えを促進する制度の創設を検討します。老朽マンションは今後、大きな社会問題になる可能性が高いですから、こうした対策は必須といってよいでしょう。
一方で、新しく建設するマンションについては、長期に渡って利用できるよう工夫していく必要があります。
東京都が建て替え促進制度を検討中
このところ老朽化したマンションから住民が徐々に少なくなり、管理に支障を来すケースが増えています。一等地にあり、管理がしっかりしている物件であれば、資産価値が維持されるので、建て替えは比較的に容易に進みます(しかも、こうした物件ほど、建て替えなくても十分に継続利用が可能だったりします)。
一方、場所が悪かったり、管理が劣悪な物件では、住民の数が減り、新しいオーナーへの入れ替えも進みませんから、建て替え費用を捻出できないケースが増えてきます。
こうした状況を改善するため東京都が検討を進めているのが、老朽マンションの買い取りによって容積率を緩和する制度です。
この制度を使えば、老朽化したマンションを買い取ったデベロッパーは、別の場所でマンションを開発する際に、容積率が緩和されます。
老朽マンションが建っていた場所で、新しくマンションを建設する場合にも、さらに別の場所で老朽マンションを買い取ることによって容積率をアップできる仕組みです。
本当の意味での住宅インフラ整備が必要
東京の場合、中心部であれば、新規のマンション建設に対する需要がかなりありますから、この施策は一定の効果を発揮しそうです。ただ、マンション建設のニーズが少ないエリアの場合、この制度がどれほどの効果を発揮するのかは現時点では何ともいえません。
日本では1970年代以降、多数のマンションが建設されましたが、一般的な戸建て住宅と同様、住宅としての耐用年数が短いという特徴があります。日本は経済的に豊かではありませんでしたから、質の低いマンションが大量生産されたのはある程度、やむを得ないことかもしれません。一方で、日本人の住宅インフラに対する意識がいまだに低いというのも事実です。
コンクリートの建造物は最低でも50年、うまく使えば100年は使用できます。
これを30~40年程度で解体していては、社会全体としてムダなコストが多くなり、結果的に消費者の生活水準を引き下げてしまいます。
老朽マンションの建て替え需要が増えている今は、住宅インフラを見直す最大のチャンスです、次に建設するマンションは、メンテナンスの容易さなども含め、100年間使えるものを目指すべきでしょう。その分、多少、コストは上がりますが、トータルでは全員にとってメリットがあります。
デベロッパーや行政だけに頼るのではなく、初期コストをかけて、トータルで得をするという勇気を、私たち自身も持つ必要があるでしょう。