経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 社会

年金の繰り上げ・繰り下げ受給は得か損か?

加谷珪一の年金教室 第6回

 現在、年金の支給開始年齢は原則として65歳からですが、支給開始年齢を前倒し(繰り上げ受給)したり、後ろ倒し(繰り下げ受給)することもできます。しかし前倒ししたり、後ろ倒しすると年金の額が変わりますから注意が必要です。

繰り上げ受給は最大で3割年金が減少

 政府としてはできるだけ年金を支払いたくないですから、繰り上げ受給する場合には減額に、逆に繰り下げ受給する場合には増額されます。

 繰り上げ受給の場合、60歳から年金を受け取ることができますが、この場合には3割、年金が減額されます(支給開始年齢が65歳に近づくにつれて減額幅が小さくなります)。60歳で受給開始した場合と65歳で受給開始した場合を比較すると、受け取る年金の総額は76歳で逆転し、65歳受給の方が有利になる計算です。

 つまり繰り上げ受給した場合には、長生きすると損することになります。

 さらに長生きした場合には、今度は繰り下げ受給の方が圧倒的に得になります。70歳からの受給に切り替えた場合には42%も年金が増額されます。81歳以上まで長生きするのなら、70歳からの受給にした方がもらえる年金総額が多くなります。

 ちなみに繰り上げについては、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)は同時に繰り上げる必要があり、どちらかだけの繰り上げはできません。一方、繰り下げ受給については、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に手続きが可能で、どちらかだけ繰り下げるといったことが可能です。

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基本的には65歳受給にしておいた方がよい

 このように何年生きるのかによって、繰り上げ・繰り下げの損得が変わってきますが、現実には、自分の余命を予測するのはほぼ不可能です。どちらが得なのかということについてはあまり考えず、原則としては65歳で受給開始することを予定しておいた方がよいでしょう。

 もし65歳以降も働く予定がある場合には、繰り下げ受給を選択しておいて、70歳までは働いたお金で生活するという考え方もあります。

 しかしながら、年金が増額になると、介護保険料や税金の額が増え、思った程の増額にならないというケースが出てくる可能性があります。当然ですが、この間に払い込んだ年金保険料については増額の対象にはなりませんので、この点にも注意が必要です。

 年金を受給しながら働いた場合、一定以上の収入については年金減額の対象となりますが、それでも基本的には65歳受給をベースにしておいた方が無難です。政府は年金の受給開始年齢を遅らせることを検討していますが、もしこの動きが本格化してきた場合には、その時にあらためて判断すればよいでしょう。

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