コンビニ経済学 第13回
このところドラッグストアのコンビニ化が顕著となっています。一部地域ではコンビニよりも地域に密着しているケースもあります。市場全体ではまだコンビニの半分ですが、近い将来、コンビニを脅かす存在となるかもしれません。
コンビニをはるかに超える成長率
ドラッグストアは、以前はその名前の通り、医薬品や生活用品などを中心とした商品ラインナップでした。しかし最近では、日用品だけでなく食品の強化に乗り出しており、コンビニやスーパーと変わらない業態へのシフトが進んでいます。一部地域ではコンビニやスーパーと完全に競合する状況です。
ドラッグストアがコンビニやスーパーにとって脅威となっているのは、食品を中心に積極的な安値攻勢を展開しているからです。
ドラッグストアはもともと薬局ですから薬を取り扱っています。薬の利益率は高く、そこで得られる利益を食品の値引きに投入すると、近隣から多くの顧客を呼び寄せることができます。これによって全体の販売金額を大きくし、値引きを行っても利益を確保することが可能となります。
ドラッグストアの市場規模は約6兆円となっており、10兆円以上の規模があるスーパーやコンビニと比較するとまだ小さい存在です。
しかし、2017年における販売金額の伸びは、コンビニが2.4%増、スーパーが1.4%増だったにもかかわらず、ドラッグストアは6.4%増と両者を圧倒しています。今年に入ってからも、前年同月比で6~8%の拡大が続いており、1%から2%台の伸びにとどまっているスーパーやコンビニとは対照的です。
業績拡大のペースにこれだけけの差があれば、近い将来、ドラッグストアが小売りの主役に躍り出るという話もあながちウソではなくなってくるわけです。
企業規模が小さく、規制産業であることも足かせになる?
しかしながら、このままドラッグストアがコンビニやスーパーの市場に追いつくのかというとそう簡単にはいかないでしょう。なぜなら、ドラッグストアはまだ小規模な事業者が多く、しかも業態が地域によって異なるからです。
コンビニの全店売上高は、業界トップのセブンでは4兆円を超えますが、ドラッグストアは大手でも5000億円から7000億円の範囲です。売上高の大きさは、メーカーや卸に対する価格交渉力に直結しますから、コンビニと比較するとまだまだです。
規模の急拡大にはM&A(合併・買収)が必須ですが、ドラッグストアは地域性が強く業態も様々です。地方の郊外を中心に大規模店舗を展開するところもあれば、都市部でコンビニ型の店舗を中心に展開するところもあり、こうした企業が合従連衡するのは容易ではありません。
またドラッグストアは薬品の販売という規制業種でもあり、直営店による営業が多いという特徴があります。フランチャイズを中心に柔軟な展開を行ってきたコンビニとは正反対といってよいでしょう。
破竹の快進撃はそろそろ限界かもしれませんが、ドラッグストアが小売市場に与える影響は小さくありません。この業界の動きは今後も要注目です。