加谷珪一の知っトク経営学 マーケティング編 第3回
【顧客セグメンテーション】
前回は、マーケティングにおける基本的なフレームワークである4Pについて解説しました。製品、価格、流通、販促の4つの項目をうまくミックスさせ(マーケティング・ミックス)、最大の効果を得ることが重要です。
しかし、このマーケティング・ミックスをうまく作用させるためには、ある一つの前提条件が必要となります。それは、どのような顧客に売るのかという、ビジネス上のターゲットが明確になっていることです。
顧客を分類することで顧客を知る
マーケティングは主に製品やサービスの販売に関わる概念ですから、どのような相手に製品やサービスを売るのかという部分が明確になっていなければ、どんなに立派なフレームワークを用いたところでよい結果は得られません。
誰に売るのかという部分を明確にするためには、「セグメンテーション」と「ターゲティング」というステップを経て、顧客を定義することが重要です。
セグメンテーションは、不特定多数の顧客をグループ化して分類する作業のことを指しています。そして、グループ化された顧客の中から、具体的な対象顧客を選び出していく作業のことをターゲティングと呼びます。
マーケティングの世界において、もっとも標準的な顧客のセグメント化は、人口動態的な分類や年齢による分類でしょう。
住んでいる地域や家族構成などで顧客を分類し、それぞれの属性に応じたアプローチを行うというのは、どの企業でも取り組んでいると思います。
人口動態的な切り口以外にも、セグメント化は様々な視点から実施されます。過去の購買履歴から顧客をグループ化するのは、最近のネットビジネスでは当たり前のことですし、心理分析的な手法を用いて趣味嗜好などから類型化するという手法もあります。これらの方法は、複数組み合わせることで、より効果を発揮します。
今後はAIとの協業が必要に
最近はITシステムの性能が向上し、人工知能を使ってビックデータの処理が容易に実施できるようになってきました。これにともなって、セグメント化の手法もより高度になっているようです。
しかし、どんなに技術が発達しても、マーケティングの基礎という意味では何も変わりません。
顧客セグメンテーションで重要なことは、どのような切り口でセグメントするのかという一点に尽きます。目的に合致しない切り口で顧客を分類してもビジネス的にはまったく意味がありません。あまりにも属性を細かくしすぎると、結果に有意性が得られないことも出てきますし、一方で、属性を粗くしすぎると、セグメント化する意味がなくなってしまいます。
試行錯誤を繰り返し、自社のビジネスにもっとも適合したセグメントのやり方を模索していく以外に決め手となる方法はないのです。マーケティングに求められるのは、このあたりのセンスであり、この仕事が経験値に大きく左右される理由でもあります。
ただ人工知能による解析の場合、人間の感覚では想像もつかなかったような結果を出すことがあり、その場合には、まったく別のメカニズムが存在している可能性について考える必要があります。これからはAIとうまく協業することが重要となってくるでしょう。
「加谷珪一の知っトク経営学」もくじ