経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. お金持ち

ビジネスの売却はもっとも効率がよい資産形成方法

お金持ちを科学する 第16回

 前回前々回は、事業が富を拡大させるメカニズムについて解説しましたが、短期間でまとまった資産を得るもっとも効率のよい方法は、事業を他人に丸ごと売却することです。
 事業の立ち上げと売却を何度も繰り返し、巨額の資産を得る人をシリアル・アントレプレナー(連続起業家)と呼びます。

連続して売却を行い巨万の富を作る

 事業を売却することの最大のメリットは、将来、獲得できる利益の先取りが可能になることです。飲食店を例に、具体的に説明してみましょう。

 年間に5000万円を売り上げる飲食店があったと仮定しましょう。ここから得られる利益は、利益率10%だとすると500万円程度ということになります。これが10店舗であれば、売上げは5億円となり、事業から得られる利益は5000万円になるわけです。

 この時、この10店舗をまとめて売却したらいくらの値段が付くでしょうか?

 もちろん、売買は売り手と買い手がいて初めて成立するので、値段がいくらになるのはケースバイケースです。しかしながら、以前の記事で解説したように、ある程度までなら理論的に算出ができます(参考記事「ベンチャー企業が富を膨らませるメカニズム」)。その方法を使っておおまかに計算すると、この事業は理論的に3億円から5億円程度で売却が可能という結論が得られます。

 今、年間5000万円しか利益を上げられない事業が5億円で売れる理由は、将来も毎年5000万円ずつ利益を上げる見通しが立っているからです。事業の売却価格には、この将来の見通しまで含まれるものであり、売り手にとっては将来利益の先取りということになります。

 このようにして、事業のメドがある程度立った段階で事業を売却し、再び新しい事業を始めたり、株式などに再投資して富を増やしていくわけです。

business

縦と横のレバレッジ

 米国ではこうしたやり方で資産を増やす人がたくさんいます。小さく始めたビジネスが成長するたびに売却し、資産額を10倍、20倍へと拡大させていくのです。

 残念ながら日本では米国ほど会社の売買は盛んではありませんが、昔に比べれば、事業の売買はそう難しいことではなくなりました。うまく探せば、事業を高値で売却するチャンスはいくらでも見つけ出すことができるはずです(実際、筆者も事業を売却した経験があります)。

 会社から給料をもらったり、個人の能力で仕事をしているだけでは、得られる金額にはどうしても上限が出来てしまいますが、それを事業にすることで、何倍ものレバレッジをかけることが可能となります。先ほどの飲食店には5億円の価値があると説明しましたが、この金額を1人で稼ぐのは並大抵のことではありません。

 やはり事業という形で横方向にビジネスを拡大し、さらに将来の期待値という縦のレバレッジを加えるというのが、もっとも効率の良い富の作り方ということになるでしょう。

お金持ちを科学する もくじ

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