諸外国と比較して、日本は女性の社会参画が進んでいないと言われています。近年、政府主導で各種の取り組みが進められたこともあり、ある程度は改善が見られましたが、まだまだ十分とはいえないでしょう。
制度の問題ではなく、日本人のメンタリティに問題があるとの指摘もあります。確かに、議員などによる女性蔑視発言を見ると、こうした意見にもうなずける部分があります。また、一部の男性からは女性が権利を主張し過ぎると批判する声も出ているようです。
しかしながら、女性の社会参画については、多くの人が見落としていることがあります。それは市場メカニズムという視点です。
フェミニズムが女性を解放したわけではない?
日本と比較して米国は明らかに女性の社会参加が進んでいます。しかし、米国もつい最近までは、日本と同様、男性優位の社会でした。
一般的に、女性の立場を向上させようという運動が活発になったのは1970年代のこととされています。こうした活動は当時、ウーマンリブと呼ばれ、その後はフェミニズム運動とも呼ばれるようになりました。
米国ではその少し前、黒人の人権を守ろうという公民権運動が盛んでした。公民権運動の結果として実施された政策がアファーマティブ・アクションと呼ばれるもので、これは、企業の採用や大学の入学者について、一定割合を黒人などマイノリティ向けに確保するというものです。
この影響を受けて、女性解放運動においても、企業の採用や昇進にあたって、一定の枠を確保しようという動きが活発になりました。欧州でも役職者や議員の一定割合を女性にするというクオータ制を採用するところが少なくありません。
しかしながら、こうした動きは下手をすると逆差別につながる可能性があるほか、既得権益を持った人から激しい反発があるため、スムーズに実施するのは簡単ではないという問題があります。
ところが米国では、こうした強制的な女性の地位向上策を実施する必要はほとんどありませんでした。その理由は、1980年代に入ってレーガン政権が発足し、市場原理主義に基づいた競争政策が導入されたからです。
適切な競争環境の整備が重要
グローバルな競争環境に直面した米国企業は、男性なのか女性なのかについて議論している余裕はなくなってしまいました。能力があって稼げる人なら、人種や性別を問わず採用していかないと生き残れなくなったのです。結果として、女性解放運動が活発な時代でも実現できかなった男女平等を、あっという間に実現してしまったのです。
これは全世界的に共通の現象といえます。
よく世界の男女平等ランキングといったデータが公表されますが、毎年、ランキングの上位に入るのは、北欧諸国など1人あたりのGDP(国内総生産)が高い国です。
北欧は小国なので、経済運営が有利になるという点については割り引いて考える必要がありますが、大国を比較しても、ドイツやイギリス、米国など、経済的に優位な国が上位に位置しています。一方、先進国でランクが低いのは、イタリアなど経済が停滞している国が多く、日本はさらに悪いという状況です。結局のところ、競争が活発かどうか、あるいは経済が豊かかどうかがカギとなっているのです。
豊かになった国が男女平等を実現したとも解釈できますが、おそらく因果関係は逆でしょう。競争環境を整備すると男女平等が進み、結果として豊かになったと考えるのが自然です。
つまり、日本でも適切で健全な競争環境を整備すれば、あっという間に、女性の社会参加が進む可能性があるわけです。自由競争の結果であれば、逆差別が起こる心配もありませんし、多くの人にとって合理的な施策といえます。