加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第10回
維新の党代表などを務めた江田憲司衆議院議員のツイッター発言をきっかけに、政治家や公務員によるマスメディアへの情報リークが一部で問題視されています。各種報道を読み解く際には、リークというものの性質についてよく理解しておく必要があるのですが、そもそもリークというのはどのような行為を指すのでしょうか。
報道の多くがリークで成り立っている
リークというのは、政治家や公務員、企業幹部など重要情報を握っている人が、特定のマスメディアに対して情報源を紙面で明かさないことを条件に、優先的に情報を提供することです。たいていの場合、自分の組織が有利になるよう情報を操作する目的で行われます。
これはもちろんよいことではありませんし、提供する情報の内容によっては、法律に抵触する可能性もあります。しなしながら、現実にはマスコミ報道のかなりの割合がこうしたリークによって成り立っています。
例えば、犯罪に関するテレビ報道では、逮捕された犯人について「本人はすでに自供しており、素直に取り調べに応じています」という原稿が当たり前にように読み上げられています。
しかしながら、素直に取り調べに応じているという情報は、取り調べにあたった警察しか知ることができません。しかも裁判も始まっていませんから、厳密にはこれも捜査情報であり、こうした報道は警察によるリークに該当します。
こうした情報リークが行き過ぎるとえん罪などの温床となりますが、一方で、社会的な注目を集めた犯人がどのような様子なのか知りたいというニーズは一定数存在します。
また一般論として、政治家や公務員、企業経営者などが、自分たちにとって都合の悪い情報を積極的に開示するわけがありません。公式発表だけしか報じることができないということになれば、悪い情報はいっさい外部に出なくなってしまうでしょう。
組織の中の内部対立を使用して、こうしたリーク情報を引き出すことで、国民に隠していた情報を引き出すという側面もあるわけです。
既存メディアには、記事を読み解くルールが存在している
こうしたリーク報道は、政治に限らず、経済や投資、産業などあらゆる分野に存在しています。わたしたちは、普段、何も考えずに報道に接していますが、情報社会を生き抜くためには、受け身の姿勢では不十分です。
先ほど述べたようにリークはよいことではありませんが、組織や人の対立というのは常に存在しますから、リークによる報道も決してなくなりません。ベテランの政治家ともなると、どんな記事が出てもそれに対して怒ったりせず、丹念にその記事を読み、情報源が誰なのかを考え、次の戦略を練ります。
私たちも同じような姿勢で報道に接することができれば、ビジネスや投資で有利に振る舞うことができるはずです。
新聞やテレビなど従来型マスメディアの記者は、記事の書き方について徹底的な基礎トレーニングを受けているので(最近の記者は、このあたりが少々怪しくなっているのですが・・・)、一定のルールに従って記事を書いています。したがって、このルールを知っていれば、どの記事がリークなのか、おおよその判断が可能です。また書き方によっては情報源が誰なのかもある程度、推測することができます。
こうした基礎トレーニングを受けていない新興Webメディアの記者やライターの場合、この法則が適用できないのですが、今のところ、政治家や官庁、大企業が新興Webメディアに情報をリークすることはほとんどありませんから、とりあえず既存メディアだけを分析していれば大丈夫です。
本連載では、いずれ、こうした記事の分析方法についても、解説していきたいと思っています。
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