加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第8回
情報はその形態によっていくつかに類型化できます。情報を体系的に取り扱うことができれば、個人のリテラシーは飛躍的に向上します。以下では、情報を扱うための基本的なマトリックスについて解説します。
情報マトリックスを構成する2つの切り口
情報は、大きなものと小さなものに区別することができます。情報の形態という意味では、数字を中心としたものと、ストーリー(物語)を中心としたものに分類することが可能です。
情報の区分によって、その取り扱いや分析の手法は異なりますから、自分が取り扱う情報がどの種類に属するものなのか、常に意識しておくことが重要です。
情報に関する2つの切り口を使うと、以下のようなマトリックスで整理することが可能です。
マクロ情報 VS ミクロ情報
データ VS ストーリー
マクロ情報は、国や社会全体といったスケールの大きい情報のことを指します。これに対してミクロ情報は、個別の会社や組織、人など、カバーする範囲が狭い情報のことを指しています。
データはまさに読んで字のごとく、数字を使った情報のことを指します。具体的にはGDP(国内総生産)といった統計データや企業の財務諸表、各種の調査結果などをイメージするとよいでしょう。これに対してストーリーは、物事の流れを意識した情報になります。企業が倒産するまでの顛末を記した記事などをイメージすると分かりやすいかもしれません。
マクロとミクロを縦軸に、データとストーリーを横路にマトリックスを作ると図のようになります。ここには情報に関するほとんどの職業がマッピングされます。
マクロとデータならエコノミスト、ミクロとストーリーならジャーナリスト
マクロ情報が中心で、データを多用する代表的な仕事のひとつが、経済分析を行うエコノミストです。全国的な消費動向や設備投資、企業の生産統計などから、GDPの予測を行ったり、経済活動全般の分析を行うことが主な仕事です。
基本的にはデータの取り扱いが主になりますから、定性的にどのようなことが起こっているのかということは重視しません。また個人や個別企業がどのような振る舞いをしているのかは考えずに分析を行うことがほとんどです。
同じデータを活用する仕事でも、ミクロ情報を使って個別企業の分析を行うということになると、これはアナリストやコンサルタントがカバーする分野ということになります。証券会社に属する証券アナリストがもっともイメージしやすいと思いますが、彼等は、個別企業の財務諸表を分析し、今後の業績や株価の推移について予測します。
これに対してジャーナリズムの世界は、どちらかというとデータよりも、取材で得た生の情報を重視します。一般的な新聞記事や雑誌記事は、取材相手から得た定性的な情報をもとに、一定のシナリオに沿って記事にしていきます。したがってジャーナリズムの多くは、ミクロでストーリー重視というところにマッピングされます。
ただジャーナリズムは非常に間口が広く、これだけにとどまるものではありません。基本的にジャーナリズムは一般向けに情報を提供するのが仕事ですから、必要に応じてカバーする範囲は変わっていきます。
ジャーナリズムの中でも、マクロ的な情報に特化し、かつストーリーを重視するということになると、オピニオンという色彩が強くなってきます。この分野をあえて区別するとコラムニストの仕事が該当するでしょう。
情報に関する職業の中で、最近、特に注目を集めているのはデータ・サイエンティストでしょう。ITを駆使し、無数のデータの中から特徴的な傾向を探り出し、企業の経営や社会的提言に結びつけていきます。
情報の大きさを問わず、大量のデータから一定の傾向を導き出しますから、この仕事は、データの領域で、かつミクロとマクロの両方に位置することになります。
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