初の議会証言に臨んだFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル新議長は「経済に対する見通しが強まった」と発言し、米国の景気が好調であることをあらためて確認しました。今のところ米国の利上げは年3回と予想されていますが、年4回に増える可能性も高まってきたといえるでしょう。
米国経済は好調。インフレが進む可能性も
パウエル議長は、イエレン前議長の後任として2月に就任したばかりです。就任当日にはニュヨーク市場で株価が大きく下落するなど、ちょっとしたハプニングがありました。今回の議会証言は、運営方針について語る初の機会だけに多くの市場関係者が注目していました。
全体としては、事前に予想された範囲内であり、無難にこなしたという印象ですが、イエレン氏よりはやや強気なスタンスがにじみ出ていました。
イエレン氏は経済の先行きについて慎重なスタンスを示すことが多く、金利を引き上げることによって景気の腰を折らないよう、利上げペースについても緩やかものを想定していました。パウエル氏も基本的には同じですが、米国経済に対する見通しはやや強気で、インフレが進む可能性についても言及しています。
つまり景気が加速することの弊害をより重視していることであり、必要に応じて金利を引き上げ、物価を安定させようというスタンスが感じられます。
景気過熱を警戒するのは、FRB議長としては標準的
こうしたスタンスはFRB議長としては、むしろ標準的なものといってよいでしょう。
バーナンキ氏とイエレン氏は、リーマンショックへの対応という、いわば非常事態におけるFRB議長でした。
しかし米国経済は完全に復活し、むしろ景気の過熱が心配される段階に入りました。金利上昇を警戒した株式市場は、パウエル氏の議会証言を受けて大幅に下落しましたが、米国経済が好調だということであれば、ほどよい調整と見なすことが可能です。
パウエル氏は、米国経済に対する逆風の一部は追い風になったとして、しばらくは需要の増加が続くとの見方を示しています。おそらく市場も同じような見立てと考えてよいでしょう。
市場関係者は早耳です。パウエル氏の議会証言を受けて、彼等の関心事は、好調な米国景気がいつ踊り場に差し掛かるのかという、将来の話にシフトしつつあります。
景気がよく株式も上昇しているうちに、次のフェーズについて考えを巡らせることは、投資で成功するための重要なポイントといってよいでしょう。