加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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カネボウ問題に見る、ホンネとタテマエ論

 

 カネボウ化粧品の美白化粧品において、肌がまだらに白くなる症状が出た問題で、同社の子会社が、被害者を「賠償請求地雷原」などと表現していたことが共同通信の報道で明らかになりました。同社はこの件について、全面的に謝罪しています。

問題表現を書いた本人にとって社内は家族も同然?
 カネボウ化粧品によると、同社子会社の会議において、白斑様症状を発症した顧客について「賠償請求地雷原」と表現していたとのことです。また同社は共同通信による報道があるまで、この事実を把握できていませんでした。

 今回の事例を見ると、日本の会社組織に農村共同体的な雰囲気が色濃く残っていることや、そうした雰囲気に慣れきってしまっていることが、これからの価値観多様化社会においていかに危険なことなのかが分かります。
 これは、政治家の発言が国内外で大きく異なることのリスクとも通じるものがあります。

 今回の件においてカネボウは加害者ですから、被害者を侮辱するような、こうした表現は決して許されるべきものではありません。
 ただ、この資料を作成した社員にとっては、おそらく記述した表現はホンネなのだと推察されます。もしそうだとすると、その考え方そのものを変えさせるのは、現実的には困難かもしれません。

 一方、この記述をした社員は、それが世の中に広く知られた場合には、問題になる表現であることもある程度自覚していたと考えられます。しかしその人は、社内とはいえ、記録が残ってしまう紙にこうした表現を残してしまうのです。

 おそらく、本人にとっては会社の中は、完全な身内であり、農村共同体の中の世界なのでしょう。しかし、よく考えてみれば分かると思いますが、会社はあくまで仕事をするために一時的に人が集まっている場にすぎず、家族が集まる場所ではありません。

 そのような場所で不用意な発言や記述をしていいわけがないのです。

 日本には、ホンネとタテマエという言葉がありますが、タテマエはあくまでタテマエを貫き通すことで意味を持ちます。コロコロと時と場所で言うことを変えていては、それはタテマエにはならないわけです。原理原則を貫けば、ホンネを言えるのは、最終的には家族か親しい友人の前だけということになるでしょう。

kanebou

日本人がグローバル化できていないのだとすると、その理由は英語ではない
 逆に考えれば、この資料を書いた人にとっては、会社は家族であり親しい友人だったわけです。しかし現実は違います。本人がどう思おうと勝手ですが、会社は家族の集まりではなく、したがってホンネが通る場所ではないのです。

 実はこの事実をよく把握できていない人が意外に多いのです。自分の主観で「家族」と思った場所でホンネをやすやすと語ってしまい、それ以外の場所との整合性が取れずにトラブルになってしまいます。

 以前、伊勢神宮の銘菓「赤福」の前社長が「外国人には来て欲しくない」という発言して問題になったことがありました。伊勢市では外国人観光客の誘致に取り組んでおり、飲食店や土産物店向けに英会話の研修会を開くなどの対策を実施している最中だったからです。

 しかし前社長が発言したのは、地元で開催されたフォーラムの対談であり、彼にとっては「家族」のいる場所だったのでしょう。しかし、そんな理屈は他には通用しませんし、ましてや外国になど無理な話です。

 日本の政治家でも、国内の発言と海外での発言が180度変わる人がいます。諸外国でも、ホンネとタテマエという概念はあり、場所によってある程度、発言は変わります。

 しかしタテマエはあくまでタテマエであり、基本的にそれは貫き通さなければなりません。主張や論旨がコロコロ変わることは、交渉相手に対する大変な侮辱であり、大問題に発展しかねないのです。

 本人がどのような価値観を持とうが自由ですが、他人を前にした時には、それがどんな場所や集会であれ、タテマエの世界であるということを認識できないと、これからの時代を戦っていくことは難しいでしょう。

 日本はよくグローバル化できていないといわれています。その対策として英語教育などが叫ばれていますが、おそらく問題はそこではないでしょう。グローバル化に対して障害があるのだとすると、語学の問題ではなく、自身の発言に対する一貫性など、別なところに大きな原因があるはずです。

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