加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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御嶽山被害をめぐる勝間バッシングから見えてくる、日本の問題点

 

 御嶽山の噴火によって多くの死者が出ていることについて、経済評論家の勝間和代氏がバッシングされているようです。この現象は、日本社会が何度も陥り、そしていつまでたっても改善できない、ある問題点を浮き彫りにしています。

日本社会ではなぜか理解されないラインとスタッフの違い
 勝間氏がバッシングされているのは、彼女が民主党政権時に行われた事業仕分けに「仕分け人」として参加し、火山観測事業に対するムダを指摘したことが、御嶽山を観測対象から外すことにつながったとツイートされたからです。

 しかし報道によると、御嶽山の観測予算が減っているのは事実ではあるものの、24時間監視は今も続けられており、事業仕分けによって御嶽山が観測対象からはずれたわけではないということです。

 しかし筆者が問題にしたいのはそこではありません。仮に勝間氏の指摘がきっかけで御嶽山が監視対象からはずれ、今回の悲劇を招いたとしても、勝間氏には何の責任はありません。
 というよりも、勝間氏に責任を問うという考え方は、逆に勝間氏の立場を過剰に持ち上げることにもつながってしまうものであり、好ましいこととはいえません。

 官庁や企業などの組織には、ラインとスタッフという明確な約割分担があります。ラインは業務に対する指示を出すための系統で、基本的に意思決定はすべてライン上で行わなければなりません。一方スタッフは、ライン上にいる責任者に対して、専門的な見地からアドバイスをする人です。

 スタッフの人は、専門知識を持った人ですが、あくまでアドバイザーに過ぎません。最終的な決定はすべてライン上の人が行い、その責任はすべてライン上の人が負います。そうであるからこそ、スタッフの人は、専門知識に基づいて独自のアドバイスができるわけです。

 さらに政治の場となれば、重要事項の決定については官僚が行うことすらできません。ましてや、外部の有識者である仕分け人などに物事を決定する権利や責任などがあってはならないのです。

 もし事業仕分けの結果、何らかの問題が発生した時には、その責任のすべては国民から選ばれた政治家が負わなければなりません。政治家は、国民から選ばれ、政治における最終責任を負う立場であるからこそ、国民から一定の敬意を持って処遇されるわけです。

 それを外部のアドバイザーが物事を決めたかのように扱うのは、政治家に対する冒涜であり、一方、勝間氏に対する過剰な評価といえるでしょう。

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背景には学歴エリートに対するコンプレックスが?
 事業仕分けの結果については、その責任は100%民主党の政治家が負うべき問題であり、所詮アドバイザーに過ぎない勝間氏には、そもそも問題に対して関与する権利などないわけです。

 しかし、日本ではこうしたアドバイザー的な立場の人が、あたかも物事を決めるかのような風潮があり、これによって責任の所在がはっきりしなくなるという失態を何度も繰り返してきました。
 本来、ただのアドバイザーに過ぎない陸軍のエリート参謀が実質的に意思決定を行ってしまい、日本を壊滅寸前に追い込んでしまった太平洋戦争などはその典型例といえるでしょう。

 こうした間違いが起こるのは、リーダーやライン上に立つ責任者に当事者意識が欠如していることや、国民の中に学歴エリートに対するコンプレックスがあることが原因の一つと考えられます。

 通常、スタッフの職に就く人は、専門知識を持った人ですから、いわゆる学歴エリートが多くなります。勝間氏もそういうカテゴリーに入る人物でしょう。しかし彼等は専門知識を持った人間でしかなく、意思決定を任される立場ではありません。

 彼等の発言はあくまで専門家の立場での発言として参考程度にとどめておくという姿勢がリーダーには求められます。最終的な意思決定は、アドバイザーが何を言おうと、リーダーが行うしかないのです。政府の場合には最終的な意思決定者は国民ですから、私たち国民ひとりひとりにも同じ態度が求められるわけです。

 しかし、学歴エリートに対するコンプレックスがあると、彼等の意見をただの参考意見としては扱えなくなります。必定以上に有り難がったり、逆にうまくいかないとなると、猛烈にバッシングしたりしてしまいます。

 学歴エリートに対するこのようなアンビバレントな感情がある限り、企業や国家の運営において再び大きな過ちをおかすことになってしまうでしょう。

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