経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. ビジネス

これまでのアマゾンの攻勢はまだまだ序の口だ!

 アマゾンなどネット通販のシェア拡大によって既存のリアル店舗が致命的な打撃を受ける「アマゾン・エフェクト」が、いよいよ本格化してきました。
 アマゾンの脅威についてはこれまでもさんざん語られてきましたが、ほんの序の口に過ぎません。ネット通販が消費者の行動そのものを変えてしまうという認識を持てない事業者は確実に淘汰されてしまうでしょう。

既存の店舗戦略が限界に達したオンワード

 「23区」「組曲」などを展開するアパレル大手のオンワードホールディングスが、店舗の大量閉店することが明らかとなりました。一部報道では、3000店舗のうち約2割の600店舗を閉鎖する方針とのことです。

 オンワードの大量閉店も実はアマゾン・エフェクトによるものと考えることができますが、この話を聞いて「アマゾンとオンワードは関係ないでしょ」と思ってしまった人は要注意です。確かにオンワードの服をアマゾンで買う人はいませんから、一見すると両者は無関係な話に思えます。

 同社が低迷している直接的な原因は、百貨店を基盤とした従来の店舗戦略が限界に達しているからですが、百貨店の店舗が低迷しているのは、百貨店という存在が時代に合わなくなったことだけが理由だけではありません。

 ネット通販の拡大は、単に商品購入がリアル店舗からネット店舗にシフトするだけでなく、顧客の購買行動そのものも変化させてしまいます。ネット通販での買い物が増えれば増えるほど、そもそも店舗に行く頻度が低下するとともに、リアル店舗に対して求めるものも変わってしまうのです。

 これまでネットとはあまり縁がなかったアパレルも同じで、ZOZOTOWNのようなECサイトで、多種多様なブランドの中から好みの服を探す人が増えています。ブランド・イメージ中心のマス・マーケティングは年々機能しにくくなっており、オンワードはこの影響をモロに受けてしまいました。

netshopping

ネット通販の拡大は消費者の行動そのものを変化させてしまう

 ネット通販の拡大というのは、単なる販売チャネルの変化ではなく、業界構造の変化を伴うので非常にやっかいです。今回のオンワードの大量閉店は、いよいよ日本においても「アマゾン・エフェクト」が本格的に到来したことを如実に物語っているといってよいでしょう。

 米国の小売業界はすでにとんでもない状況となっており、過去2年の間に1万以上の店舗が消滅したともいわれています。百貨店のシアーズやスーパーのKマートを展開していたシアーズホールディングス、低価格な衣料品を提供していたフォーエバー21など、大手小売店が次々と経営破綻していますし、来客数の減少から閉鎖に追い込まれるショッピング・モールも続出しています。

 ライフスタイルの変化を伴うネット通販の急拡大は、ほぼ間違いなく、数年の時間差を置いて日本にもやってくるでしょう。

 アマゾンは現在、日本市場において、自前配送網の拡大と置き配(おきはい)のサービスを着々と進めています。置き配は配送事業者にとっても、購入者にとっても圧倒的に効率がよく、置き配の割合が一定のしきい値を超えた段階で、消費者の行動パターンは一気に変わるでしょう。

 こうした時代において小売店は、独自でECを拡大するか、アマゾンに自ら出店するか、あるいは体験を売るビジネスモデルにシフトするのかのいずれかを選択しなければなりません。

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