介護への転籍もアリという損保ジャパンのリストラ計画が意味すること

 損保ジャパンが、介護会社への転籍もあり得るとしたリストラ計画を発表したことが波紋を呼んでいます。政府は企業に対して、70歳までの雇用を求めていますが、ビジネスは時代とともに変化するものであり、一生涯、雇用を保障することには無理があります。それに対する解答の1つがグループ会社を使った社内転職ということかもしれませんが、果たしてうまくいくのでしょうか。

70歳までの雇用延長が影響している

 損害保険ジャパン日本興亜が、2020年度までに国内損保事業の従業員数を4000人減らすリストラ計画を明らかにしました。マイカー保有者の減少や自動運転システムの普及で業績の伸び悩みが予想されることに加え、定型業務の自動化によって、大量の事務職員が余剰となりつつあることが原因です。

 世の中は人手不足と言われていますが、人が足りないのは、店員や介護職員など現場を有する業態が中心で、いわゆる一般的な事務職については、むしろ大量に人が余っているのが実態です。今後は業務の自動化がさらに進みますから、大量の余剰人員発生が予想されています。

 諸外国の企業であれば、余剰となった人材は金銭解雇で社外に放出しますが、日本の場合、原則として社員を解雇できないことに加え、政府は70歳までの雇用延長を企業に求めていますから、本人が希望すれば、社内でその人材を活用しなければなりません。

 業務のIT化で仕事の絶対量が減ったり、ビジネス領域が変化することがあっても、社員を継続雇用する必要がありますから、最終的には自社グループ内で配置転換するしか対処方法がなくなってきます。今回、損保ジャパンがリストラを実施するにあたり、介護子会社への転籍という措置が含まれたことにはこうした背景があると考えてよいでしょう。

tenshoku

グループ内に派遣会社を作り、社員を異業種に供給

 実は、あまり報道されていませんが、一部の大企業ではグループ内に人材派遣会社を作り、そこに余剰人材を集め、異業種に社員を派遣する取り組みが始まっているともいわれます。

 もしこうした形で異業種に派遣されれば、事実上、転職していることと同じになりますが、これは果たして労働市場として健全な姿でしょうか。

 労働者がキャリアを変更して、違う職種に転職するのであれば、労働市場を通じて人材最適配置するのが基本です。雇用延長の必要性から、派遣会社を通じて相互に人材を供給するというのは、あまり効率のよい方法ではありませんし、雇用延長された社員にとっても、あまり気持ちのよいものではないでしょう。

 終身雇用が維持できず、結局のところ、事実上の転職を余儀なくされるのであれば、労働市場を適正に活用し、市場メカニズムに基づいて転職する方が、社会全体にとっても、そして労働者によってもメリットが大きいはずです。