政府が生涯労働制に向けて着々と手を打っている

 政府が一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす、いわゆる「在職老齢年金」の廃止を検討しています。また、従来70歳までとなっている厚生年金の加入義務を70歳以降に延長する制度についても検討を進めていると報道されています。一連の制度改正は何を狙ったものでしょうか。

事実上の生涯労働制へ

 政府が現在、進めている年金制度の改正は、すべて生涯労働制へのシフトを目的にしたものです。これまでの年金制度は、定年まで働いてその後はリタイアし、後は年金で生活することを大前提にしていました。しかし高齢化の進展と日本経済の低迷で、従来の年金制度は維持が困難になっています。

 近い将来、公的年金は2割から3割程度の減額がほぼ確実となっており、年金だけで生活できない人が続出するのは確実です。

 このため政府では、基本的に一生涯働き続ける制度にシフトし、年金に頼らなくても生活できる環境を整えようとしています。つまり一連の制度改正は、生涯労働制への準備というわけです。

 これまでは、年金を受給できる年齢に達した人でも、一定以上の収入があった場合には、年金給付額を減額するという仕組みがありました。これを在職老齢年金と呼んでいますが、働く意思がある高齢者でも、年金の減額を気にして就労を躊躇するケースが見られました。政府としてはこの制度を廃止することで、高齢者の就労を促進しようとしています。

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日本経済の力量ではやむを得ない措置

 政府は近い将来、企業に対して70歳までの雇用を義務付ける方針とされていますが、そうなってくると70歳以降も働く人が増えてくるのは間違いありません。ところが現在の厚生年金は70歳までとなっており、それ以降は、働いていても年金に加入しない仕組みになっています。

 生涯労働を前提とした場合、厚生年金が70歳で終わりということでは整合性が取れませんから、当然、この部分についても延長が検討されています。政府は期間延長を検討していることについて否定していますが、具体的な検討に入っているのはほぼ間違いないでしょう。

 政府のホンネとしては、70歳以降も働く人からは保険料をしっかりと徴収し、年金財政の足しにしたいというところだと思われます。

 このように社会保障の制度は、着々と生涯労働制に向かってシフトしています。一生働くなんて嫌だという人も多いと思いますが、今の日本経済の体力では、高齢者の生活を財政的にカバーすることは不可能です。残念ですが、こうした措置もやむを得ないでしょう。