経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. トピックス

みずほFGの6800億円損失が示していること

 みずほフィナンシャルグループが2019年3月期決算において6800億円の損失を計上すると発表しました。同社では構造改革のための前向きな処理と説明していますが、額面通りには受け取らない方がよいでしょう。確かに今回の一括償却で身軽にはなりましたが、それはすでに他行が実施してきた構造改革であり、周回遅れでスタートラインに立ったという印象は否めません。

合併した旧3行の縄張り意識が激しかった

 同社では2019年3月期の業績について、当初は5700億円の黒字としてきました。しかし今回の下方修正で当期利益は約9割減の800億円となります。

 計上する損失の総額は6800億円となっており、このうち証券ポートフォリオの見直しが1800億円で、残りはすべて閉鎖店舗と情報システムといった固定資産の減損ということになります。

 同社の中核子会社であるみずほ銀行は、他のメガバンク2行と比較して業務粗利益に占めるコストの割合が高く、店舗や人員、情報システムが大きな負担となっていました。
 同行は銀行は2000年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併して誕生しましたが、他の2行と比較して旧3行の縄張り意識が極めて強く、店舗の統廃合やシステム統合などがスムーズに進みませんでした。

 もっとも足を引っ張ったのがシステム統合といわれており、銀行業務の中核を担う勘定系システムについても、仕様の異なる旧3行のシステムを併存させてきました。ライバル2行がすでにシステム統合を終え、店舗の統廃合も進めた状況であることを考えると、みずほはようやく周回遅れのリストラに手を付けた段階といってよいでしょう。

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今後の戦略をどう打ち出すのかが重要

 今回の損失で、負の遺産をすべて償却したということであれば、他行と同じ土俵に上ったということになりますが、少々、気になる点があります。それはシステム関連の減損が極めて巨額であることです。

 今回の損失のうちシステム関連の減損は4600億円に達しますが、これまでシステム開発に投じてきた資金が、十分に収益に貢献しないことを示しています。

 統合された新システムは今年7月に稼働する予定ですが、システムというのは開発だけでなく運用にも多額の費用がかかります。本当に今回の減損ですべてのウミを出し切ったのか何とも言えません。新しいシステムが本当に収益に貢献するのかを確認するためには、来期以降の業績を待つ必要があるでしょう。

 みずほ銀行は、コストが高いだけでなく、銀行の収益力を示す利ざや(預金金利と貸出金利の利回り差)についても他行に水をあけられています。

 同社は近く、中期経営計画を発表する予定となっています。今回の減損が本当に今後の収益にプラスの作用をもたらすのか、よく吟味する必要がありそうです。

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