自動車メーカー各社のEV(電気自動車)シフトが急ピッチで進んでいます。しかしEV時代のカギを握るといわれる電池の生産は圧倒的に中国メーカーのシェアが高いという状況です。日本の完成車メーカーは中国の電池メーカーとの提携に走っていますが、このままでは基幹部品を外国企業に握られてしまう可能性もあります。
ホンダは中国CATLと戦略的パートナーシップを締結
2019年2月4日、ホンダと中国の電池メーカー「寧徳時代新能源科技(CATL)」は、EV向けリチウムイオン電池の開発、生産に関する戦略的パートナーシップを締結しました。両社は車載用電池を共同開発するとともに、CATLはホンダに対して2027年までに56ギガワット時のリチウムイオン電池を供給します。ホンダの生産量見込みから推定すると、ホンダが販売するEVのうち、かなりの割合がCATLからの電池調達になると思われます。
EV時代にカギを握るのは電池技術とされており、日本勢はもともと電池については優位に立っているはずでした。パナソニックは世界トップの乾電池メーカーでしたし、他のメーカーにも豊富な実績を持っていました。これに対して中国の電池メーカーは後発ですから、日本に追いつくのは至難の業であると考えられていました。
ところが中国メーカーはめざましい勢いで技術を蓄積し、今となっては車載用電池市場では中国メーカーが世界を席巻している状況です。トップ10社のうち7社が中国メーカー、2社が韓国メーカーとなっており、日本企業はパナソニック1社しかありません。
パナソニック1社では日本の自動車メーカーが必要とする電池をカバーできませんから、日本メーカーは必然的に中国メーカーとの戦略提携を模索することになります。
基幹部品を中国に握られるリスクは大きい
国内トップのトヨタ自動車はパナソニックと車載用電池に関する合弁会社を設立しており、両社から3500人を移管すると発表しています。
しかしながらトヨタは、パナソニックとの提携に加え、水面下ではホンダと同じくCATLとの提携を模索していると報道されています。真偽の程は不明ですが、トヨタの現状を考えると中国メーカーとの提携は、十分、あり得るでしょう。
トヨタは年間1000万台近くの生産量があり、仮に一部がEVにシフトしただけでも、相当な台数のEVを生産しなければなりません。パナソニック1社による調達では不十分なことは明らかですから、近いうちに電池戦略についてトヨタが何らかの発表を行う可能性は高いと思われます。
日本は電池の分野では圧倒的な優位に立っていたはずですが、気がつかないうちに、市場シェアの多くを中国メーカーに奪われてしまいました。電池はEVにおける基幹部品ですから、EV時代にシフトすればするほど、中国の存在感が大きくなってしまいます。
自動車という日本経済の屋台骨において、外国企業の主導権が強まることは、日本にとっては避けたいところです。しかしながらIT業界が完全に米国主導になってしまったのと同様、これも時代の流れなのかもしれません。