2019年度は、年金が実質的に減額される

加谷珪一の年金教室 第10回

 日本の公的年金は慢性的な赤字財政となっており、将来、年金が減額されるのではないかとの懸念が高まっています。しかしながら、実質的な年金の減額ということであれば、着々と進められています。カギを握っているのはマクロ経済スライド制という仕組みです。

マクロ経済スライド制って何?

 マクロ経済スライド制というのは、2004年に導入された仕組みですが、名前だけを聞くと、経済状況に応じて年金額を調整するためのものというイメージを持ってしまうかもしれません。しかし現実はそうではありません。

 ごく簡単に説明すると、マクロ経済スライド制とは、人口動態の変化に合わせて、年金の給付を変動させるための制度です。日本の年金は賦課方式といって、現役世代から徴収した保険料で高齢者を支える仕組みになっています。こため、現役世代の保険料収入が下がってしまうと、年金財政が悪化するという特徴があります。

 現役世代の比率が下がった分だけ、高齢者の年金を減らさなければ、制度が破綻してしまいます。マクロ経済スライド制は、これを防ぐための制度と考えればよいでしょう。つまりこの制度は、ズバリ、年金給付の抑制を目的としたものです。
 
 制度が出来上がったのは2004年ですが、マクロ経済スライド制は、これまでたった1度しか発動されていません。日本経済がずっと低空飛行を続けていたことから、年金給付を引き下げてしまうと高齢者の生活を直撃する可能性が高かったからです。

 しかし、年金財政の状況がさらに深刻化しており、専門家の間では、そろそろ制度の再発動が行われるとの見方が強まっていました。そして、とうとう2019年度に再発動されることが正式に決まったわけです。

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事実上の年金減額

 2019年度の年金はもともと物価上昇率などから増額の予定でしたが、マクロ経済スライド制の発動によって、増加分のほとんどが帳消しになる見込みです。

 国民年金の場合には、2019年度は400円ほど支給額が増えるはずでしたが、実際には67円しか増えておらず、支給額は6万5008円にとどまります。
 厚生年金では、厚労省が提示しているモデル世帯(夫婦二人)に当てはめると、本来ならば月額1400円近くの増額となるはずでしたが、実際には227円しか増えていません。

 物価が上がっているにもかかわらず、年金は増えていないので、これは実質的な減額といってよいでしょう。

 マクロ経済スライド制の発動は段階的に行われるので、急に年金額が大きく減るということはありません。しかしながら、来年度以降も発動が実施された場合には、物価が上がっているのに年金が増えないという形で、事実上の減額が行われます。

 これからの時代は、仮に物価が上昇した場合でも、同じようには年金額は上がらないと考えた方がよいでしょう。

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