経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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春に食品が続々と値上げ。とうとう「ステルス値上げ」も限界?

 2019年は「値上げ」の年となりそうです。冷菓や飲料など、生活に密着した商品が続々と値上げされます。世間ではデフレが続いていると喧伝されており、実際、そうした面があるのは事実ですが、水面下では着々とモノの値段が上がっています。

アイス、飲料、調味料などが一斉に値上げ

 森永製菓、森永乳業、江崎グリコ、ロッテ、明治などアイスクリームのメーカー各社が、2019年3月1日以降、主力商品を値上げに踏み切ると発表しました。「ピノ」「チョコモナカジャンボ」「明治エッセルスーパーカップ」「雪見だいふく」「ジャイアントコーン」など、多くの人気定番商品が130円から140円になります。

 飲料も続々、値上げとなります。コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、1.5リットルや2リットルの大型ペットボトルを中心に、コカ・コーラ、ファンタ、アクエリアス、綾鷹、爽健美茶、森の水だより、など主力商品を2019年4月1日から20円値上げします。コカ・コーラの2リットル商品は340円が360円となります。

 サントリー食品インターナショナルも値上げを発表しており(こちらは5月1日から)、大型ペットボトル商品を中心に20円ほど価格が上がります。サントリー鳥龍茶、サントリー緑茶 伊右衛門、南アルプスの天然水など、やはり定番商品が対象となっています。
 このほか、味の素の「アジシオ」や「味の基KKコンソメ」、東洋水産の「マルちゃん 生めん」なども値上げとなります。

 各社が値上げに踏み切るのは、原材料価格と物流費が高騰しているからです。

 アジアなどを中心に諸外国では経済成長が著しく、グローバルなモノの価格は基本的に上昇基調が続いています。その結果、日本が輸入する食材の価格も上がっており、これが利益を圧迫している状況です。

 日本国内特有の事情としては人件費の高騰があるでしょう。日本経済は慢性的な人手不足となっており、特に工場や物流の現場で働く若い労働者の確保が難しくなっています。アルバイトの時給はここ数年、かなり上昇しており、これが物流コストを上昇させ、やはり利益を圧迫するという図式です。

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ステルス値上げはもう限界

 海外のモノの値段が上がったり、国内の物流費が高騰するのは、構造的な要因ですから、企業努力で変えることは不可能です。

 これまで日本のメーカーは、こうしたコスト上昇に対して、表面上の価格を据え置く代わりに、内容量を減らすという、いわゆる「ステルス値上げ」を実施してきました。しかし、いくら表面的な価格を据え置いたところで、内容量を減らしている以上、値上げであることに違いはありません。

 こうしたステルス値上げはそろそろ限界に達しており、名目上の値上げに踏み切るところが増えてきたわけです。

 2017年から2018年にかけては、宅配や引っ越し、外食など人件費がかかるサービス業を中心に値上げが行われました。こうした動きがいよいよ価格帯が安かったモノの分野にも及んできたと考えてよいでしょう。

 日本はデフレが続いているといわれていますが、あくまで鈍っているのは物価の「上昇率」であって、物価そのものは一方調子で上がっています。
 一方で、景気はそれほどよくありませんから、大幅な賃上げは望めません。賃金が上昇しない中で物価が上がってしまうと、やはり生活は苦しくなってしまいます。消費者は支出に対してより敏感になっておく必要がありそうです。

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