1ドル=104円まで円が急騰した理由

 外国為替市場で急激な円高が進んでいます。2018年1月3日には、ごくわずかの時間に円は4円も急騰し、一時、1ドル=104円を付ける場面がありました。その後、ドルは急速に戻しましたが、しばらく不安定な状況が続く可能性があります。

本当にリスク回避の円高?

 円急騰の直接的な原因は、米アップルが2日に発表した業績見通しが大幅に引き下げられたことです。同社の業績見通しの引き下げが、米国景気の失速を連想させ、リスク回避から円が買われたという解釈が一般的でしょう。

 アップルは米国経済を代表する企業ですから、同社の業績見通しが悪化したということは、米国の景気がスローダウンするリスクが高まったことを意味しています。実際、米国の債券市場では米国債が買われ、長期金利が低下しています。

 現実には債券と株式を相互に行き来する投資家は少ないのですが、投資家のリスク回避傾向が高まり、結果として、株が売られ、債券が買われるというのは事実です。円高もその流れの延長線上にあるという話はウソではないでしょう。

 しかし、メディアなどでよく解説される、リスク回避ムードの高まりから、安全資産である円が買われたという話を額面通りに受け取るのはやめた方がよいかもしれません。

 3日に円がドルに対して続伸した同じタイミングで、円はユーロに対しても急騰しています。一方、ユーロとドルの相場は同じタイミングでドル高が進行しました。もし米国経済の失速懸念が為替市場を動かしたのだとすると、ユーロも高くなっている必要がありますが、そうなってはいません。

 つまり市場全体でみれば、ドルが売られたわけではなく、円だけが買われた図式と見てよいでしょう。そうなってくると、米国の景気減速懸念をきっかけにリスク回避で円が買われたという説明は、必ずしも状況を的確に説明しているとは言えなくなります。

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日本円が投機対象となっている?

 グローバルな経済構造を考えた時、世界の景気を牽引しているのは明らかに米国です。

 中国、欧州、日本の3地域はすべて米国に対して輸出をしていますが、米国景気後退の減少の影響を大きく受けるのは中国と日本です。中国は、為替が自由市場になっていませんから、為替が自由に取引できる国の中で比較すると、もっとも悪影響を受けるのは日本ということになります。

 日本企業の米国向け輸出の低迷は業績悪化要因ですが、市場ではこの話と円高がイメージ的に結びつきやすくなっています。米国経済の鈍化懸念によって円だけが一気に買われたことにはそうした背景があると考えられます。

 さらにいえば、日本企業の業績が悪化し、国内の景気が冷え込んだ場合、デフレ傾向がさらに強まり、理屈上は円高を誘発することになります。こうしたイメージが重なり、投機的な投資家にとって、円は格好のマネーゲームの対象になったものと考えられます(AI取引が大きく影響したとの噂もあります)。

 わずか数分間の間に4%も上昇するなど、尋常な水準の取引では到底あり得ない値動きです。筆者は短期的、投機的な取引にも、流動性の供給など、一定の貢献があるという立場ですが、それでも、今回の為替の動きは、かなり投機的であり、あまり健全なものとはいえません。

 あらゆる投資対象にあてはまる話ですが、経済的な基礎体力が落ちてくると、投機的な取引が増え、価格の上下変動(ボラティリティ)が激しくなるという特徴が見られます。日本円はすでにそうした投機の対象になっているという事実をしっかり受け止めておいた方がよいでしょう。

 最終的な為替の動向は、米国経済の見通しによって大きく変わってきますが、これがはっきりするまでにはもう少し時間がかかります。その間は、為替が乱高下する可能性がありますから、十分な注意が必要です。