武田薬品が7兆円の「超」巨額買収を決断

 製薬大手の武田薬品工業がアイルランド製薬大手シャイアーの買収を正式に決定しました。2019年1月にも買収が実施される見込みです。自身よりも時価総額がはるかに大きい企業を買収するという賭けに出たわけですが、何が狙いなのでしょうか。またリスクはないのでしょうか。

国内トップでもグローバル市場では中小企業

 武田は2018年12月5日、臨時株主総会を開催し、シャイアーの買収について株主の承認を得ました。買収金額は何と7兆円近くになる見込みで、武田自身の時価総額をはるかに上回る「超」巨額買収が実現します。国内企業のM&Aとしては過去最高金額となります。

 今回の買収は企業規模を拡大することで、国際市場での競争力を高めることが狙いですが、自身よりも大きい企業を買収するというスキームであったことから、創業家など一部の株主が反対を表明していました。総会では多くの賛成票を得て承認されましたが、極めてリスクが大きく、かなりの「賭け」であることは間違いないでしょう。

 武田がリスクの大きい買収に乗り出しのは、このままではグローバル市場で競争力がなくなってしまうという危機感です。同社は国内では断トツの製薬会社ですが、グローバル市場では中小企業に過ぎません。ロシュやノバルティスといったトップグループの企業と対抗するにはあまりにも企業規模が小さすぎるのです。

 世界の製薬業界は、生き残りをかけた巨額買収合戦がほぼ終盤戦に差し掛かっており、このタイミングを逃してしまうと、グローバル市場は諦め、縮小が続く国内市場で生き残るしか道がなくなります。武田にとっては世界に打って出る最後のチャンスだったといってよいでしょう。

買収の意義を説明するウェバー社長(武田薬品工業のWebサイトより)

買収の意義を説明するウェバー社長(武田薬品工業のWebサイトより)

買収金額が高いことは百も承知

 しかしながら、武田の売上高が1.7兆円であるのに対して、シャイアーはほぼ同規模、時価総額でははるかに武田を上回るという状況で、「小」が「大」を飲み込む案件です。買収に7兆円もの金額を投じますから、当然、武田の財務は悪化します。

 シャイアーは高収益企業ですが、血友病や免疫疾患など希少疾患を得意すると製薬メーカーでどちらかというとニッチ戦略です。したがって、この高収益が継続的に続く保証はありません。

 少なくとも、シャイアーの現時点での収益を維持するとともに、シナジー効果で武田の既存事業についても収益を拡大しない限り、買収金額が高すぎて、採算が合わなくなってしまう可能性があるわけです。
 武田がもう少し早く、こうした買収に乗り出していれば理想的だったのですが、現時点でこの話をしても意味がないでしょう。経営陣も、買収価格が高いことについては百も承知だと思います。
 
 今回の決断で武田は、国内トップという立場から、グローバル市場のチャレンジャーという立場にシフトしました。もう後戻りではできませんから、実績を出していく以外に進むべき道はありません。今後の経営陣の采配に期待したいと思います。