秋篠宮さまの発言を情報リテラシーの切り口で考えると

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第33回

 秋篠宮さまが、皇太子さまの天皇即位に伴って行われる皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」について、国費ではなく、天皇家の私費を使うべきとの見解を示したことが波紋を呼んでいます。
 皇族は、自由に発言できる立場ではありませんので、皇族の発言を読み取るには少しコツが必要です。情報リテラシーという切り口で、秋篠宮さまの発言について考えてみたいと思います。

皇室全体との意向と考えた方が自然

 秋篠宮さまは、11月30日に53歳の誕生日を迎え、恒例の事前記者会見が行われました。その中で秋篠宮さまは、大嘗祭について国費ではなく天皇家の私費を充てるべきとの見解を示されました。皇族がこうした発言を行うのは異例のことです。

 若い世代の人はあまり知らないかもしれませんが、大嘗祭を国費で行うのか、天皇家の私費で行うのかという問題は、長い間、政治的に論争となっていたテーマです。大嘗祭は極めて宗教色が強い儀式ですから、憲法における政教分離の原則に反するのではないかとの指摘が一部から出ていたからです。

 平成に行われた大嘗祭の時も、かなりの論争となりましたが、政府(宮内庁)は今回の大嘗祭について前例を踏襲する方針を一方的に固めていました。

 秋篠宮さまは、私費からの支出が望ましいという見解を宮内庁に伝えたそうですが「(宮内庁が)聞く耳を持たなかった」と述べられています。皇族が、こうした批判とも受け取れるような発言をすることは原則としてあり得ませんから、これはよほどの事態であると受け止めた方がよいでしょう。

 また、今回の発言は、秋篠宮さまが誕生日を迎えるにあたって行われる記者会見の場で出てきたものです。皇族が思いつきで発言することはまずありませんし、記者会見という公式の場で、わざわざご自身から切り出した話ですから、事前に準備したものであることは間違いありません。

 秋篠宮さまは、皇太子さまが即位された後は、皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になることが決まっています。こうした重要な立場であることを前提にした上での発言ですから、天皇陛下や皇太子さまとの相談なく発言を行うというのも考えにくいことです。

 一連の状況を考えると、秋篠宮さまの発言は、皇室全体の意向と考えた方が自然でしょう。

Photo by OIST

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新しい皇室像について議論して欲しいというメッセージ

 秋篠宮さまは「宗教行事と憲法との関係はどうなのか」とも発言されていますから、今回の発言が憲法上の政教分離の原則を念頭に置いたものであることは間違いありません。

 宗教の問題が関係してくると、人は感情的になり、無用な政治的対立を生み出します。皇族は、当然、皇室の半永久的な継続を望んでいるでしょうし、それは大多数の日本国民にとっても同じだと思います。無用な政治的対立を引き起こすような事態は避けて欲しいという皇族の意向は重く受け止めるべきでしょう。

 この話は、天皇陛下があえて退位を表明したこととも密接に関係しています。

 皇位継承問題が議論される中、わざわざこのタイミングで退位を表明したのは、時代が変化する中、女性天皇の是非も含め、どのような皇室像が今後の日本にとってふさわしいのか、国民的な議論をして欲しいという強い意思表示と考えるのが妥当です。

 皇族が意見を表明することは好ましくないとの見解も出ているようですが、憲法は皇族が意見を持つこと自体を否定しているわけではありません。象徴とはいえ天皇陛下は日本の国家元首ですから、(主権は国民にあるのは当然のこととして)皇族の意向に耳を傾ける必要があるというのは、国民として常識的な話といってよいでしょう。

 皇室の問題は政治家にとって「票」になりにくく、多くの政治家がこの問題を避けてきました。しかし英国など王室制度を残す欧州各国と同様、日本という国が皇室を中心に成り立っている以上、議論を先延ばしにすることはできません。

 皇室には長い伝統がありますが、時代に応じて、その形態を柔軟に変えてきたからこそ、伝統が維持されてきたという側面があることは無視できません。どのようにすれば、時代に合った皇室を形作ることができるのか、国民的な議論が必要でしょうし、そうした取り組みこそが、本当の意味で皇室を繁栄させる原動力となるはずです。

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