多くの日本人が望んでいないのに、移民政策が着々と進む理由

 安倍政権は、大量の外国人労働者を受け入れるという、事実上の移民政策に舵を切りました。保守派と称される安倍政権が移民受け入れに積極的というのは、少々、意味不明なところではありますが、日本が移民国家になる可能性はかなり高くなったといってよいでしょう。

人手不足に悩む財界からの強い要望

 日本社会は、移民の受け入れに対してアレルギーがあるようですが、受け入れ政策は着々と進められおり、これを後退させようという動きは見られません。少なくない国民が反対しているのに、導入が滞りなく進んでいるのは、移民政策の背後に「不都合が真実」があるからです。

 筆者は、基本的に移民の受け入れには反対しない立場ですが、外国人労働者に日本の生活習慣を理解してもらうための施策や、日本社会が彼等に対して差別的な対応をしないようしっかりとした体制を構築することが必須要件と考えています。

 政府の動きを見ていると、こうした対策を実施することよりも、できるだけ早期に移民受け入れを実現したいという部分が大きいように思えます。その理由は、深刻な人手不足に悩む財界からの強い要望があるからです。

 外食産業や小売店、農業といった分野では、必要な業務に従事する人材を集められない状況となっており、外国人労働者がいないと業務が回らないというのが実状です。人材がいないと業務が止まってしまってしまいますから、状況はかなり深刻といってよいでしょう。

 日本は人口減少社会ですから、人が足りなくなって当然といえば当然なのですが、数字の上だけで考えると、実は人手不足はそこまで深刻な状況ではありません。

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社内失業者を活用すれば、実は移民は必要ない?

 日本企業の社内には、給料はもらっていても、実質的に仕事がないという、いわゆる社内失業者が何と400万人も存在しています(リクルートワークス研究所調べ)。しかも社内失業者は年々、増加しており、2025年には500万人近くに達する見込みです。

 日本企業で働く正社員の数は約3500万人ですが、社内失業者のほとんどが正社員と考えられますから、先ほどの500万人という数字が正しければ、正社員の何と15%近くが何もせず会社に在籍していることになります。
 日本企業の生産性は諸外国と比較するとかなり低く、これが長時間労働の温床となっているのですが、正社員の15%が遊んでいるのだとすると、生産性が低いのも当然でしょう。

 先ほど、日本では人手不足が深刻なので、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を決定したという話をしましたが、現在、日本で働いている外国人労働者は約120万人、受け入れ拡大で新規に増えるのは年間4万人です。あくまで数字合わせのレベルですが、社内失業者の400万人が別の仕事に従事すれば、人手不足の問題はたちどころに解消されます。

 もちろん、労働者の適性や本人の希望がありますから、すべての仕事をうまくマッチングすることはできないでしょう。しかし日本の労働市場がもっと流動的で、多くの人材がいろいろな会社を行き来するような状態であれば、ここまで人手不足が深刻化することはなく、多くの外国人を受け入れる必要もなかったというのが偽らざる現実なのです。

 しかも雇用が流動化すると、企業の生産性は確実に上昇します。マクロ経済の理論上、労働者の賃金は生産性に比例しますから、一部の労働者は転職で賃金が下がる可能性もありますが、中長期的には日本人の賃金も上昇する可能性が高くなるでしょう。つまりマクロ的には雇用の流動化はメリットが大きいということになります。

 そうした現実があるにもかかわらず、そして、多くの国民が感情的には移民に反対しているにもかかわらず、この政策が着々と進められるのは、多くの日本人が雇用の流動化を望んでいないからです。
 もし日本人が雇用の「変化」を望まないのであれば、実質賃金の低下と移民の受け入れは不可避ということになるでしょう。おそらく、日本人の多くは、明示的ではないものの、賃金の低下や移民政策をすでに受け入れているのかもしれません。