加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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活況を呈する東京の不動産取引。果たして実需はあるのか?

 

 このところ、東京の不動産取引が活況を呈しています。量的緩和策によるインフレ期待を背景に、地価の上昇を見込んだ大型案件が相次いでいます。

 また新規の大型複合施設の竣工が相次いでいるほか、次々と再開発の計画が持ち上がっている状況です。都心の賃料は上昇を始めているといわれていますが、本当にこれほどの需要があるのでしょうか?

なぜか東京では大規模な不動産が次々と建設されている
 先月末、大手デベロッパーの森トラストが、東京・目黒にある複合施設「目黒雅叙園」を1300億円で買収するというニュースがありました。

 目黒雅叙園は、JR目黒駅の近くにある、結婚式場やオフィルビルからなる大型複合施設です。この施設は、バブル時代には投資マネーに翻弄され、メガバンクが抱える不良債権を象徴する不動産でもありました。

 最終的には米国の投資ファンドであるローンスターの所有となっていましたが、ローンスターはなかなか転売できず困っていたといわれています。
 森トラストが、とうとうこのいわく付きの物件を取得したことで、ようやくバブル崩壊の悪夢から日本経済が開放されたと感じた関係者も多いといわれています。

 森トラストはこのほかにも、旧虎ノ門パストラルを落札して、周辺の再開発を進めていますし、浜松町の貿易センタービルも近く、大規模な建て替えが行われます。
 最近では、再開発が行われていた新橋・虎ノ門地区において、「虎ノ門ヒルズ」がオープンしたばかりです。

 東京では次々と新しい超大型ビルが竣工しており、この動きは今後も続きそうです。これはアベノミクス効果であり、日本経済が成長に向かって進み始めている証拠であるとの意見もあります。しかし一方で、本当にこれだけの不動産に需要はあるのか?と疑問視する声も上がっています。

 こうした開発案件が最終的にどうなるのかは、将来になってみなければ分かりませんが、現在、都心で行われている数多くの不動産開発は、少々いびつなものといってよいでしょう。
 大きな需要がないにも関わらず、こうした過剰な不動産開発が進められる背景には、やはり量的緩和策の影響があります。

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ビルを作って経済を回すのは発展途上国の経済
 日銀の量的緩和策で金融機関の日銀当座預金には大量の資金が積み上げられています。本来であれば、こうした資金は企業向けの融資に回され、最終的には企業の設備投資に向かうはずです。量的緩和策もまさにそこが狙いといえます。

 しかし、現在の日本企業には有効な設備投資を行う対象がありません。工場の多くが、アジアなど海外に移転してしまい、国内には投資する先がないのです。

 本来であれば、日本は工業化の先を行く成熟社会ですから、国内に新しいサービス業が次々と生まれている必要があり、そこには多くの資金需要が発生しているはずです。

 しかし日本は、従来型の産業構造から転換できておらず、新しいサービス業がなかなか生まれません。
 しかし、銀行には日々、大量の資金が提供されますから、この資金を遊ばせておくわけにはいかなくなっています。結果的に、融資対象としてはもっとも簡単な不動産にばかりお金が回っていると考えられます。

 しかし需要がないところにいくら新しい不動産を作っても、それは古い不動産からテナントを奪うだけで、経済全体にはメリットをもたらしません。ビルを建設する時の資材や人件費などで一時的には潤うかもしれませんが、それは恒久的な需要ではないのです。

 大型の高層ビルなどは100年以上の耐用年数があるのが普通であり、米国では築100年のビルが当たり前のように使われています。

 日本はもう発展途上国ではありませんから、新しい建物を次々に立てて経済を回す時代はとっくに過ぎ去っています。本来であれば、古いインフラを大事に使い、供給されたお金は新しい知識産業の育成に回るようにするのが正しい姿といえます。

 景気低迷が長期間続いてきたことを考えれば、とりあえずどんな形であれお金が回り始めるのは評価すべきという考え方もあります。

 ただ、東京オリンピックという特需もあり、ハコモノ専先行で物事が進んでしまう環境が揃っており、少々行き過ぎが懸念されます。まだ先のことかもしれませんが、こうした開発の反動は想像以上に大きなものになるかもしれません。

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