米中貿易戦争の影響が、じわじわ顕在化してきた(前編)

 米中貿易戦争の影響が徐々に顕在化してきました。これまでは好調な米国経済の影に隠れていましたが、そろそろ実体経済へのマイナス面を考慮すべき時期に入ってきたようです。

貿易戦争の影響はインフレという形で顕在化する

 トランプ政権は2018年3月に、中国産の鉄鋼やアルミに対する追加関税を皮切りに、次々と関税措置を繰り出し、米中は貿易戦争とも呼べる状態になっています。

 貿易戦争は経済にとって確実にマイナスですが、これまでのところ大きな影響は出ていませんでした。その理由は、高い関税が現実の経済に影響を与えるまでには、タイムラグがあるからです。
 しかし貿易戦争の勃発から半年以上が経過していますから、そろそろどこかに影響が出てきても良い頃であり、実際、その兆候がところどころ観察されるようになっています。

 経済学的な一般論として、ある国が特定国からの輸入品に対して高関税をかけた場合、製品を輸入している事業者は調達先の変更を迫られます。関税を低く抑えられる第三国に同じ製品があれば、そこからの輸入に切り替えるはずですが、第三国に同一の製品がない場合、事業者は自国産の製品に切り替えざるを得ないでしょう。

 この場合、企業の仕入れコストは大幅に上昇します。第三国で代替品が見つかっても、価格が高かった場合には同じ結果になるでしょうし、代替品を諦め、関税を支払って輸入を続けた場合もコスト増という部分では同様の効果をもたらします。

 輸入している事業者はそのままでは業績が悪化してしまいますから、どこかのタイミングでコスト上昇分を価格に転嫁する必要に迫られます。このようにして各業界で徐々に値上げが進み、最終的には消費者が購入する製品やサービスの価格も上昇していきます。

 つまり、貿易戦争における初期の影響はインフレという形で顕在化する可能性が高いわけです。

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貿易戦争によって一時的に景気が良くなる可能性も

 しかしながら、第三国からの輸入に切り替えたのか、自国産に切り替えたのかによって、同じインフレでもマクロ経済的な影響は異なります。第三国からの輸入の場合には単純なコスト増ですが、自国産の場合には経済圏内でのお金の回り方が変わってくるからです。

 自国産に切り替えるということは、自国の生産が増えるということであり、その分だけ国民所得は増加します。少なくとも短期的にはGDP(国内総生産)にはプラスの効果をもたらす可能性もあるのです。もしこうした動きが顕著だった場合、貿易戦争が勃発しているにもかかわらず、一時的には景気が良くなる可能性すらあるでしょう。

 しかしながら、中長期的に見た場合、高い関税の実施は、確実に経済を弱体化させていきます。一時的な景気の浮揚効果が大きかった分、その後の落ち込みも大きくなると考えられます。

 次回は、具体的な影響がどの分野に及んでいるのかについて考えてみたいと思います。